A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (605)
第602話 レッド
活躍していないルシェに魔核を渡す事は心情的にかなり抵抗感があったが、今後の事を考えて大人の対応で結局渡す事にした。
「あ〜やっぱり働いた後の魔核は最高だな!」
「そうですね、満足です」
シルの満足そうな笑顔には癒されるが、ルシェの偉そうな態度にはやはり納得はいかない。
ゆっくりと深呼吸をし気持ちを沈めて先を急ぐが、さっきは初見のドラゴンが出てきたのでここからは更に注意が必要だ。
「ミク、さっきのとかはもしかしたら『ライトニングスピア』が効かないかもしれないから、その時はスピットファイアで牽制か『幻視の舞』を試してみてよ」
「そうね。ここから先はあんなのがどんどん出てくるかもしれないものね」
「私は近接で『斬鉄撃』だな。おそらく斬れると思う」
「お願いします」
念の為に今後の戦略を話し合いながら歩いて先に進む。
「そういえば、あのドラゴンの皮どうしたの?」
「一応まだ手元にはあるけど」
「さっさと財布にでもしてもらいなさいよ」
「財布に仕立ててくれるお店がわからないんだけど」
「そうなの? よかったら紹介するわよ」
「値段ってどのぐらいするんだろう?」
「素材持ち込みだから十万円もあれば作ってもらえるんじゃ無い?」
「結構するね」
「職人によるオーダーメイドだからそのぐらいはするでしょ」
「そうなんだ……」
十万円か……
正直財布にそこまでお金をかけなくてもいい気もする。
別にドラゴン革の財布がどうしても欲しいってわけでもないし今使っている一万円の財布もまだまだ現役で使えているし、まあまたでいいかな。
「ご主人様、モンスターですが、おそらく上空にいるのでワイバーンだと思います」
「そうか、じゃあみんないつもの感じでいこう」
ワイバーンとは何度も戦っているので、それほど問題はないだろう。
俺とあいりさんとベルリアが前を歩きシルが中衛で後方に残りのメンバーが控える。
「マイロード、ワイバーンに間違いはなさそうですが、色が赤く少し大きいようです」
視力の良いベルリアにはしっかりと敵のドラゴンが見えているようだが、赤くて少し大きい個体か。
普通のワイバーンじゃないのか?
そのまま近づいていくと俺の目にもワイバーンを捉える事ができたが、確かに赤く、いつも見ている個体よりも一回りは大きい。
数は三体。
一体はシルに任せるとして、残りのメンバーで二体をしとめなければならない。
「シル一体まかせたぞ」
「かしこまりました。ご主人様も頑張ってくださいね」
このシルの一言に癒されるが、どうやら赤いワイバーンもこちらに気がついたようだ。
三体のうちの一体が口を開くと、突然口から大きな炎の塊を放ってきた。
「みんな! 避けろ〜!」
通常のワイバーンは炎をはかない。
やはり普通の個体じゃない。
炎の塊はそれなりの大きさがあるが、まだ距離があったので余裕をもって回避する事ができた。
ただ、俺達が回避したのを見て赤いワイバーン三体が同時に炎の塊をこちらに向かって次々に放ってきた。
一個であればそれほど問題ではなかったが三個同時となれば話しは違う。
しっかり予測しながら回避しないと回避した後に他の炎の塊に当たってしまっては元も子もない。
赤いワイバーンの攻撃を集中して躱していくが、このまま一方的に攻められても埒があかない。
「スナッチに牽制を!」
俺は後方に控えるミクに指示を出す。
ミクがスナッチに命じて、すぐにスナッチが前方へと駆けていき、赤いワイバーンに近づき上空に向かって『ヘッジホッグ』を放った。