A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (606)
第603話 中位種
スナッチの『ヘッジホッグ』による鋼鉄の針が上空にとどまる赤いワイバーンへと降り注ぐ。
「ギョアエエエ!」
鋼鉄の針は三体のワイバーンのうちの二体にダメージを与える事に成功し、二体からの炎の攻撃が一瞬止んだ。
俺は『ドラグナー』を構えてトリガーを引く。
他のメンバーもこの機を逃さず、一斉に攻撃をかける。
俺の放った銃弾が蒼い光の糸を引いて赤いワイバーンの胸部を捉えるが、残念ながら消滅までは至らない。翼を止めたワイバーンは揚力を失って地面へと落下する。
ダメージを与える事はできたが、明らかに通常のワイバーンに比べて耐久性が増している。
シルの『神の雷撃』で一体は葬り去る事ができているが、残りの二体はまだ健在だ。
「落ちた蜥蜴はただの蜥蜴だな。さっさと燃えてなくなれ『破滅の獄炎』」
残りの一体に向けてルシェが獄炎を放つ。
いつものように獄炎が赤いワイバーンを包むが、肉が焼けている感じが薄い。
もしかして、この赤い外皮は炎への耐性があるのか?
炎を放つし炎属性なのか。
一応獄炎に縛られて動く事はできなさそうなので、放っておいてもう一体にかかろうとするが、既にベルリアとあいりさんが、ほぼ同時に突っ込んでいった。
向かっていく二人に向けて、地表に落ちたワイバーンは口を開き炎の塊を連発するが、二人とも完全に見切って躱しながら近づいていく。
ワイバーンは炎が当たらないのを理解したのか、翼を動かして風を起こしベルリアとあいりさんの接近を阻んでいる。
攻めあぐねる二人を見て、すぐさまミクが『ライトニングスピア』でワイバーンの動きを止める。
「ヤアアアア!」
ワイバーンの動きが止まった瞬間一気に間合いを詰めたあいりさんが薙刀で斬りつける。
あいりさんに続いてベルリアも二刀を振るい、ワイバーンに手傷を負わせる。
二人から攻撃をくらってもまだ消滅には至っていない。
やはり耐久力が高い。
「さすがに大きいだけあって、あっさりとは消えてくれないようだな。だがこれで終わりだ!『斬鉄撃』」
なかなかしぶとかったが最後は、あいりさんの一撃がワイバーンの喉元を掻き切り、赤いワイバーンを消滅させた。
残りは一体だが、金属竜の時と同様に地味に燃えている。
獄炎に対してこれほどの耐性を見せているので普通の炎では太刀打ちできないかもしれない。
明らかに今までのワイバーンよりも手強い。
「なんか、この赤いワイバーンって今までのやつよりも大分強くないか?」
「海斗、おそらくこの赤いワイバーンは中位種だろう」
「中位種ですか?」
「そうだ。今までのドラゴンは明らかにドラゴンとしては小型の下位種だったが、今回のはサイズも少し大きいし、攻撃力、耐久力ともに今までの個体を凌いでいる。おそらくは今までのドラゴンより上の中位種だろう」
中位種か。確かにそう言われれば納得の強さだと思う。
だが、いくら炎耐性があるとはいえ、このままでは、最後の一体が燃え尽きるまで待つ事になってしまう。
「ベルリア!」
俺はベルリアに前回同様とどめを促す。
「姫、このベルリアに武功を立てる機会をお与えください。必ず姫の助けとなってみせます」
ベルリア? 趣旨が変わってないか?
「ふん! ベルリアがそうまで言うなら聞いてやってもいいぞ」
「はっ、ありがたき幸せ」
まあ、ある意味ルシェの扱い方としては正解なのか?
ベルリアが獄炎で燻っている最後の一体に近づきとどめをさす。
「姫の前です! さっさと消えてください『アクセルブースト』」
ベルリアの攻撃が赤いワイバーンの頭部を捉え、消滅へと誘った。
地面に残された魔核を確認すると確かに今までのワイバーンのものよりも少し大きく、そのことがあいりさんの言っていた中位種というのが正しいことを裏付けていた。