A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (610)
第607話 GW
ついに今日からゴールデンウィークだ。
今週一週間はいつも以上に集中してスライム狩りに励んだ。
十七階層をゴールデンウィーク中に攻略してヒカリンを助ける。
そしてゴールデンウィーク明けに春香とカフェに行く。
そのためにこの数日一階層でのスライム狩りに集中したが、期限が決まっているのでこのペースでいくことができたが、ずっとこのペースを保つ事はできない。
今の俺には、たかがスライムだが、長時間没頭すると心身ともにすり減っていく。
おかげでスライムの魔核のストックも十二分にあるのでゴールデンウィークの間は探索に専念できる。
「じゃあ、もう残り半分を切ってると思うから、頑張っていこう」
「そうね。GW中盤までにはこの階層を越えたいわね」
「この階層のボスも想定しておく必要があるな」
「普通に考えると上位ドラゴンですかね」
「可能性はあるな」
上位ドラゴンか。
所謂、俺達のイメージにあるドラゴンはこの上位ドラゴンのことだと思うが、当然十七階層に出現するようなモンスターではないので、出るとすれば階層主としてだろう。
サイズも火力も桁違いのはずだ。
「でもその前に、足下をすくわれないように集中して臨みましょう」
「海斗がそれを言う?」
「そうだな、この前も足下をすくわれたのは海斗だったな」
「はは……」
今日は体調も万全なので居眠りをすることはありえない。
なのでトラップにかかることもない。
俺達は、スタートしてからほぼ四時間歩き続けて前回の地点まで到達した。
幸いにも中位ドラゴンには一体も出会っていない。
もしかしたら、あの赤いワイバーンはイレギュラーだったのかもしれない。
「ご主人様、敵モンスター四体ですが、まだ少し距離があります」
「どのくらい?」
「おそらく百メートル程度だと思います」
確かにいつもよりも距離があるな。
シルの感知能力が上がっているのだろうか?
「それじゃあ、いつも通りの隊形でいきましょう」
意識を前方へと集中して、前へと進んで行く。
まだ敵の姿は見えないが、既に五十メートルは進んだので、あと五十メートルもないはずだ。
いつ出現してもいいように、先を見据えながら進む。
「カコッ」
音を立てずに進んでいる最中にその音は聞こえてきた。
前回とは少し違う軽い音だが、しっかりと俺の耳には聞こえた。
まさか……
いや、でも誰だ?
ベルリアも何も言ってこなかったのに。
またルシェか?
俺は緊張しながらルシェの方を見るが、ルシェは俺に対して全力で首を振る。
ルシェじゃないのか?
じゃあ誰だ?
俺はその場で足を止めてパーティメンバーを見回すが皆一様に首を振っている。
俺の聞き間違えか?
いやでもみんなにも聞こえていたようだし。
「ベルリア、なにかのトラップか?」
「マイロード、申し訳ございません。前方に集中していて気がつきませんでした
ベルリアを責めることはできない。パーティメンバー全員が前方にいるであろう敵に集中していた。
敵に集中していればしているほど、トラップには気が回らなくて当然だろう。
だけど、特になにも起こる気配はない。
なにもないのか?
「なにも起こらないな。とにかく注意しながら前に進もうか」
この場に留まっていても、敵に感知され先制されてしまうかもしれない。
その場から進もうとした瞬間足が動かない。
うそだろ……
俺なのか?
どうしようもない絶望感に苛まれる。
「みんなごめん。俺みたいだ」
「すまない。私もだ」
「え?」
「マイロード申し訳ありません。私もハマってしまったようです」
だれが発動させたのかはわからないが、多重トラップだったようで、どうやら前を歩いていたシルを除く三人が同時にトラップにハマってしまったらしい。
「ご主人様、もしかして動けないのですか?」
「ああ、一歩も動けない……」