A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (611)
第608話 はまったら……
「ベルリアとあいりさんはどうですか?」
「マイロード、申し訳ありません。私も同じく動けそうにありません」
「私も全く足が動かない。無理だな」
俺達の足は魔法の拘束具によりしっかりとロックされてしまっている。
これってどうやったら拘束が解けるんだ?
この前は敵を倒したら解けたけど……
「マイロード! 少しまずいことが……」
「どうしたんだベルリア?」
「敵です」
「どこだ?」
「こちらに向かって来ています」
俺の目には見えないがベルリアには見えているのだろう。
どうやら俺達のことを感知した敵がこちらに向かって来ているらしい。
どうしよう……動けない。
動けるのはシルとルシェそしてミクとスナッチ。数の上では敵も四体のはずなので負けていないが、ミクとスナッチはあくまでも後方支援型だ。
敵と一対一で構えるのは得策ではない。
考えがまとまる前に敵の姿を前方に捉えることができたが、こちらに向かって来ているのは赤いワイバーンが三体に鏡面の身体を持つドラゴンが一体だった。
「ここでこいつらか……」
こいつらと正面から戦って大丈夫なのはシルとルシェだけだ。ミクとスナッチは無理だ。
しかも赤いワイバーンは炎の塊を放ってくる。
動けない俺達は格好の的だ。
「シル!『鉄壁の乙女』を頼む!」
「わかりました」
「ルシェ! 今回はルシェが頼みなんだ。頼んだぞ! ミクとスナッチはルシェのフォローを!」
「あ〜めんどうだな。しょ〜がない。そんなに頼むんだったらやってやるよ。後でしっかり魔核をくれよな」
「わかってるよ。頼んだ!」
「はい、はい」
シルの手を取られるのは痛いが、シルを前に出すと確実に俺かあいりさんがやられる。
シルには『鉄壁の乙女』を発動してもらいルシェに任せることにした。
ルシェは、真面目にやれば強い! たとえドラゴン四体であろうと敵じゃないはずだ。
スナッチが飛び出していきドラゴン達の前で『ヘッジホッグ』を発動し鋼鉄のニードルを放つ。
残念ながら鏡面装甲のドラゴンにはノーダメージだが、赤いワイバーンのうちの二体にはダメージを与えることに成功したようだ。
スナッチはスキルの発動と同時に反転してその場から離脱した。
赤いワイバーンは中位ドラゴンなので戦闘力は鏡面装甲のドラゴンよりも上だが、ルシェに限って言えば相性が悪いのは鏡面装甲の方だ。
「ルシェ! 鏡面の方は俺達でなんとかする。赤いワイバーンを頼む!」
俺は『ドラグナー』を構えて鏡面装甲のドラゴンに狙いをつける。
避けたり動いたりはできないので、空を立体的に飛び回るワイバーンの相手は難しいが、鏡面の方のドラゴンであれば攻撃だけはできる。
俺の意図を理解したベルリアとあいりさんもその場からスキルを発動する。
三人の攻撃が鏡面装甲のドラゴンへと向かう。
「チョロチョロ飛び回ってうるさい。さっさと堕ちろ!『黒翼の風』」
ルシェが一番手前のワイバーンに向けてスキルを発動すると上空をホバリングしていた赤いワイバーンはルシェによる風の暴力に蹂躙されてズタズタに斬り刻まれて墜落し、そのまま消滅した。
ほぼ同じタイミングで俺達の攻撃も鏡面のドラゴンに命中し大きなダメージを与えることに成功した。
見る限り、もうフラフラなのでその場から動くことはできないだろう。
「ガァアアア〜!」
二体の仲間がやられたことに激昂した赤いワイバーン二体は上空から、間髪入れずに炎の塊を連続で放ち始めた。
光のサークルのおかげでダメージはないが、炎の熱気が伝わって来てかなり暑い。