A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (613)
第610話 GW 初日終了
少し大ぶりの魔核三個と通常サイズの魔核を拾い先を目指すべく歩き出す。
「それにしても危なかったな〜。まさか三人が動けなくなるとは思わなかった」
「私も罠にハマったのは初めてだったから、さすがに焦ったぞ」
「あの程度のトラップを見破れないとは一生の不覚。ただ私は、トラップを発動させた覚えはないのですが」
「ああ、俺も音は聞いたけどスイッチを踏んだりした覚えはないんだよな〜」
「そういえば私もないな」
「じゃあ一体誰が……」
俺も前回罠にハマった経験があるのでわかるが、確実に今回は俺が引き金ではないはずだ。
ベルリアも普通に考えてハマるとは思えない。
となるとあいりさんだが、あいりさんが嘘を言っているようには見えない。
ハマった三人には覚えがない。
しかも今回は一度に複数発動しているので、必ずしも踏んだ人がハマったというわけではない。
ということは、ハマった三人以外が発動させた可能性もあるということか?
まさか……
いや、可能性として一番高い気がする。
「ルシェ、ちょっと前に何か踏まなかったか?」
「何かってなんだよ。いちいち踏んだものなんか憶えてるはずないだろ!」
あれだけ罠にハマった俺達をバカにしていたが、やっぱりルシェじゃないのか?
俺の中で疑惑は確信に変わった。
さっきのトラップを発動させたのはルシェだ! 証拠はないけど確信はある。
ただ証拠がない以上推定無罪……
他の二人はルシェの仕業だとしても、あっさりと許してしまいそうだからこれ以上の追及はやめておこう。
この日一番の危機は、罠にハマったこの場面だったが、その後は罠にハマることはなく順調に前進することができた。
赤いワイバーンもその後は合計で二体出ただけで、残りは下位の属性竜中心に出現してきたので、戦闘に困ることもほとんどなく一日を終えることができた。
探索を終えて地上へと戻り、明日の待ち合わせを確認して解散となったので、そのまま帰路に着いた。
「ただいま〜」
あれ? 返事がない。
いつものように家に入るがなんの反応もない。
鍵は開いていたので、いると思うけど。
リビングへ入ると、母親と父親がそろってスーツケースに荷物を詰め込んでいる最中だった。
「ああ、帰ったのね。明日の準備をしてる最中なのよ」
「一泊二日なのにそんなに荷物いらないでしょ」
「だって海斗が予約してくれたのってスターリゾート旅籠屋でしょ〜。楽しみで張り切っちゃって」
「スターリゾート旅籠屋って有名なの?」
「そりゃあ有名よ。知ってて取ってくれたんじゃないの?」
「いや、まあ、そうだけど」
スターリゾート旅籠屋って有名だったのか。
ネットで直前に取れる場所が少なくて、高めの宿しか空いてなかったから、たまたま取っただけなんだけど、両親ともに張り切っているようなので結果オーライと言っていいだろう。
「そうだ、海斗、明日のご飯なんだけど……」
「ああ別にいいよ。カップラーメンかなにか食べるから」
「そういうわけにいかないでしょ。私達だけ懐石料理食べても美味しくなくなっちゃうわよ」
「じゃあカレーでも置いといてよ」
「海斗、お母さんに任せときなさい。明日の夕飯は期待できるわよ! 子供に親孝行してもらってるんだから、親としての義務は果たすわよ! 受けた恩は返すわ。明日絶対に間食とかして来ちゃダメよ。絶対に真っ直ぐ家に帰って来なさいよ!」
やけに強く言ってくるな。
そんなにご馳走を作ってくれるつもりなのか?
次の日の朝目を覚ますと両親は既に家を出発しており置き手紙が残っていた。
『夕食前に間食は絶対にしないこと。私に感謝すること。頑張りなさい』
なんなんだこの置き手紙は?
なにかの暗号かと思うような意味不明の内容だが、考えてもわからないので、深く考えることはやめて探索に向かう準備をすることにした。