A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (614)
第611話 二日目
「おはよう」
「おはよう。今日も頑張っていきましょうか」
「ああ、昨日まででそれなりに進んでるはずだろう。今日でかなりいいところまでいけるんじゃないのか?」
メンバーと朝の挨拶を済ませて早速十七階層へと向かう。
「砂嵐を攻略してから結構良いペースなんで、うまくいけば後数日あれば階層主のところまでいけると思います」
「そう、いよいよね」
「ミクはヒカリンに今の進捗報告とかしてるのか?」
「いえ、期待させてダメだったらって思うと……」
「そうだな。情けないが私も連絡できていないんだ」
空気が重くなった……
話題を変えよう。
「それより階層主ってなにが出るんでしょうね」
「まあ、順当にいけばドラゴンの上位種あたりじゃない?」
「そうだな。その可能性が高い気がするな」
「ドラゴンって霊薬落としますかね」
「…………」
しまった。思わず思っていることが口をついて出てしまった。
「そういえば、海斗のご両親は今日から温泉宿に行くんじゃなかったか?」
「ああ、そうです。張り切ってるみたいで、俺が起きたら、もういませんでした」
「そうか、温泉も久しく行ってないな。今度みんなで行ってみるか」
「ああ、それ良いですね。ヒカリンも誘っていきましょう」
「そうね、そうしましょう」
「お前らバカだな。わたしがいるのに心配なんか必要ないぞ! 幸運はわたしのためにあるんだからな! もちろん霊薬など造作もないことだ! 全てわたしに任せておけばいいんだぞ」
やはり、今回のことで最大の不安材料はルシェか……
自信満々の態度を見るたびに心配になる。
もう、スルーするしか俺に正面から対抗する術はない。
ルシェに対し一抹の不安を覚えるが、メンバーの集中力は高く、順調に探索が進んでいく。
昼過ぎには昨日みんなで罠にハマった地点についたが
「絶対に踏むな。絶対にだぞ」
「海斗、フラグ……」
「いやいや、そんなんじゃないから」
「海斗、妙なことを言うのは控えてくれ」
「はい……」
前にもこんなやりとりがあった気がするが、そもそも昨日トラップにハマったのは俺のせいじゃない。
注意を受けながらも慎重に足下を確認しながら進み、何事もなく危険地帯を抜けることができた。
「ご主人様、敵モンスター二体です。ご注意ください」
シルからの警告を受けてメンバーが臨戦態勢に入り、そのまま進んでいく。
「青いな」
「ああ、青いな」
「サイズも少し大きいわね」
進んだ先にいたのはモンスターだが体色は青く、サイズも属性竜よりも一回り大きい。
前方のドラゴンには赤いワイバーンに似た雰囲気を感じる。
「あれも、中位種なんじゃないですか?」
「可能性はあるな」
「とりあえず俺が狙ってみます」
赤いワイバーンと同種であれば、なんらかの強力な攻撃手段を持っている可能性もあるので、距離があるうちに狙い撃つ。
『ドラグナー』を構えて引き金を引く。
蒼い光を引いて銃弾が飛んでいき、青いドラゴンの一体に命中したが、命中した瞬間に銃弾がドラゴン体表を滑るようにしてそれて肩口に命中した。
「ガアアアアッ!」
ダメージを与えることはできたようだが、さっきのはなんだ?
「みんな、弾が滑った。あの青い体表なんか変だ!」
「変だろうが、なんだろうが関係ない! 燃えて無くなれ『破滅の獄炎』」
ルシェが俺の言葉を打ち消すようにスキルを発動した。
獄炎が俺がダメージを与えた方のドラゴンを包み込む。
「あれって、燃えてるのか?」
獄炎に包まれたドラゴンからは大量に水蒸気のような煙りが立ち上っているが、肉が焦げたような匂いはしていない。