A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (615)
第612 青い竜
獄炎で炙られて水蒸気を噴き上げてはいるが、本体へのダメージは薄いように見える。
あの青い色は水か!
水竜と同じく水を纏っているのだと思うが、水竜は獄炎でダメージを与えることができていたので、水の質量が違うのかもしれない。
全くの無傷の方のドラゴンがこちらに向けてブレスを放つ。
ドラゴンの口から螺旋状に渦巻く水流が放出されるのが見える。
「シル! 『鉄壁の乙女』を頼む!」
シルが瞬時に光のサークルを張り巡らせて、放たれた水流から俺達を守ってくれる。
光のサークルにより弾かれる渦巻いた水流の威力が明らかに今までのモンスターのものよりも高いことが見て取れる。
やはりこいつらは中位種!
纏っている水により攻撃がいなされはするが通じないわけではない。
「ミク! あいつに『ライトニングスピア』だ!」
「わかったわ『ライトニングスピア』」
水を纏っているなら中位種といえども雷には弱いはずだ。
雷の槍が青いドラゴンに向かって飛んでいき、見事に胸の中心を貫いた。
貫いたように見えたが、着弾と同時に雷の槍が消失してしまい、ドラゴンは全くのノーダメージだった。
「なんで……」
「海斗! おそらくあのドラゴンを覆っているのは純水。混じり物なしの真水だ!」
「それって……」
「純水は電気を通さないんだ! 理科で習っただろう」
「そうでしたっけ……」
水は雷を通しやすいとばかり思っていたが、純水は雷を通さないのか。
感覚的にちょっと不思議だが、勉強になった。
いや、それは今はどうでもいいが、ということはあいつには『神の雷撃』も無効化されるということか。
雷撃に獄炎も効果が薄いとなるとかなり厄介な敵だ。
「じゃあベルリアいってみるか」
「マイロードお任せください『ヘルブレイド』」
ベルリアはさすがに学習したようで、炎ではなく風の魔刀を振るい黒い斬撃を飛ばす。
黒い斬撃は、俺の銃弾と同様に当たった瞬間にズレたが、ドラゴンの肩口をえぐることに成功した。
ただ押し切るには精度が低い。
「「ガガガガアアア〜!」」
ベルリアがダメージを与えたドラゴンだけでなくルシェの獄炎をくらっているドラゴンも吠え口から同時に渦巻く水流を吐き出した。
二方から光のサークルに向かって渦巻く水流が押し寄せてきた。
『鉄壁の乙女』により防がれてはいるが、絶え間なく押し寄せる水流にシルがスキルを切らすわけにはいかなくなった。
つまりは、残りのメンバーで二体を葬り去る必要があるということだ。
「ベルリア、あいりさん、あのドラゴンに一斉攻撃をかけましょう。スナッチにも『ヘッジホッグ』を発動させてくれ!」
ルシェは残念ながら獄炎が鎮火するまでは戦力にはならないので、攻撃手段を持たないミクを除く残りのメンバーで総攻撃をかける。
俺も『ドラグナー』をしっかりと構え狙いを定める。
俺が狙っているのは、青いドラゴンが放っている渦巻く水流の中心部分。
かなり狙い辛いが、台風の目のように中心部分は空白地帯ともいうべき状況が生まれており、その隙間はドラゴンの口まで続いている。
動きながらでは決して狙うことのできない場所だが、光のサークルの中から狙い撃てば十分にしとめることは可能のはずだ。
俺は集中力を高め、狙いを固定して『ドラグナー』の引き金を引く。