A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (623)
第620話 黄色はマッディ
あいりさんと俺が縦に並んで走りベルリアがあいりさんの横を並走する。
黄色のドラゴンへ向かっていくが、どちらかというと黄色と黄土色の中間ぐらいの色合いなので、違う恐怖を覚えながらも果敢に攻めるべくバルザードと『ドラグナー』を構えて走る。
俺達の姿を捉えて黄色のドラゴンが口を開いてブレスを放ってくる。
口から放たれたのは、巨大な石の槍。
かなりのスピードで飛んできたので、すぐさまベルリアとあいりさんが左右にわかれて散開する。
俺もあいりさんについて避ける。
一発が大きいおかげで逆に軌道が予測できて避けやすい。
どうやらこの黄色いドラゴンの属性は土。
アースドラゴンの上位に位置する個体なのかもしれない。
ただ得体が知れれば必要以上に恐れる必要はなくなった。
「これでどうでしょう? 『ヘルブレイド』」
ベルリアが回避直後にスキルを発動して黒い炎の刃を飛ばす。
ベルリアの攻撃は黄色いドラゴンの首部分に命中した。
命中したが、黒い炎の刃は黄色いドラゴンの外皮を傷つけることはできなかった。
「いったいどうなったんだ?」
「多分、ベルリアの攻撃は吸収されたな」
俺も走りながら見ていたが、斬撃が吸収されるってどういうことだ?
なんでベルリアの攻撃は吸収されたんだ?
目の前で起こった現象が理解できない。
「これでもくらえ『アイアンボール』」
今度はあいりさんがスキルを発動して鉄の塊が黄色い竜を目掛けて飛んでいき命中した。
命中したが、命中した瞬間に吸収されるようにゆっくりと黄色いドラゴンの中に消えていった。
「なっ!」
さっきのはベルリアの斬撃と違って完全に見えたが、鉄球の威力が完全に殺されていた。
着弾の瞬間から、急にゆっくりになりダメージを与えることは全くできていない。
ただ、なにが起こったのかはわかった。
この黄色いドラゴンの外殻は泥。
おそらくかなり分厚い泥が表面を対流しながら身体を守っている。
その泥のせいで二人の攻撃は効果を削がれてしまったようだ。
まるで沼を纏っているかのような状態だ。
「遠距離攻撃は効果が薄そうです。直接、攻撃を叩き込みましょう!」
まさかとは思うがこの位置から『ドラグナー』を放ったとしても、あいりさんの鉄球のように飲み込まれてしまう可能性もないわけではないので接近を試みる。
黄色のドラゴンは再び口を開き巨大な石の槍を放ってくるが、先程と同じように避ける。
やはりこのドラゴンの攻撃は怖くない。もちろん直撃すれば即死する自信はあるが、注意を切らさなければ攻撃を躱すことはできる。
最初に黄色のドラゴンへと斬り込んだのはベルリアだ。
二刀を振るい攻撃をかけるが、黒い斬撃同様に黄色のドラゴンの表面に触れた瞬間、威力を奪われて、ゆっくりとした動きとなりダメージを当てることはできていない。
ベルリアは、すぐに刀を引いてその場から離脱する。
「赤い蜥蜴が、いつまでも調子に乗るなよ。さっさと刻まれて消えてしまえ!『黒翼の風』」
ルシェが赤いワイバーンに向けてスキルを発動し、風の暴力が赤いワイバーンを襲う。
風の刃が赤いワイバーンの全身をズタボロに斬り刻み、赤いワイバーンはそのまま力なく落下し、地面に叩きつけられると同時に消滅した。
「ふん! 所詮赤くて飛んでてもただの蜥蜴。わたしの相手にはならないな。もっと強いやつはいないのかよ。さっさと終わりすぎて運動にもならないぞ!」