A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (625)
第622話 セブンティーンエンド
俺は足を止めてバルザードを構えて後方へと振り向く。
こちらに迫っていた黄色のドラゴンの動きが、ミクの放った『ライトニングスピア』によって一瞬止まった。
このチャンスを逃すわけにはいかない。
俺の頭の中でスイッチが入り、周囲の時間の流れがゆっくりになるが、その中で俺の動きは加速する。
加速した俺は、距離を詰め動きを止めた黄色のドラゴンの胸部にむかってバルザードを突き入れる。
先程と同様に鈍い抵抗感を覚えるが、無視してそのまま押し込む。
すぐにバルザードの先端がドラゴンの肉に達したのを感じることができたので、その瞬間バルザードに破裂のイメージを乗せる。
『ボフゥン』
先程と全く同じように、ドラゴンを覆っていた泥が弾け飛び黄色のドラゴンの本体が露出する。
ここまでは先程と同じだが、必死で逃げている間に攻略法は考え済みだ。
ドラゴンの本体が剥き出しになった部分に向かって手早く『ドラグナー』の照準を合わせて引き金を引く。
蒼い糸を引いた銃弾が、爆ぜた部分に再び泥が満ちる前に通過して剥き出しのドラゴンの本体へと達する。
的確に胸部を捉えた銃弾が胸部を貫通してドラゴンの背部へと抜けた。
周囲の動きの速度が普通に戻ると同時に黄色のドラゴンはその場に倒れ込み、そのまま消滅した。
「ふ〜っ……」
久しぶりにスイッチが入ったな。
完全に入ったのは十六階層のボス部屋以来かもしれないが、十七階層のボス部屋を前にいい傾向かもしれない。
後の事を考えなければ十七階層主相手にもスイッチが入った状態で戦うことができる可能性が高い。
身体の異変を探すが、速い動きは一瞬だったので特に不調は感じない。
「終わった~」
「海斗、かなり危なかったな」
「そうですね、もう少しで喰われるところでしたよ」
「黄色のは思った以上に手強かった……」
「はい、そうですね。それにミクも助かったよ。あれがなかったらやばかったかもしれない」
「それにしても、あの外装厄介ね。ほとんど全員の攻撃がまともに通じなかったわね」
「うん、派手さはないけど一番の強敵だったかもな」
「海斗、身体は大丈夫なの? また無茶な動きをしてたでしょ」
「一瞬だったから特に問題はなさそうだよ」
本当にタイミング良くミクが援護してくれて助かった。
いずれにしても階層主と戦う前に無傷で切り抜けることができたのは大きい。
「どうでもいいけど早くくれよ!」
「ああ……」
「私もお願いします」
「わかってるよ」
俺はマジック腹巻きから取り出してルシェとシルに魔核を渡す。
ベルリアには前回のお仕置き継続で渡すのをやめておこうかとも思ったが、スキルも発動していたので一応渡しておくことにした。
「マイロードありがとうございます。私の剣はマイロードに!」
ベルリアはやたらとカッコいいセリフを口にしているが、ベルリアの忠誠はあてにならないので話半分で聞いておく。
今回は中位種の魔核三個なので、普段のものよりも大きい。
あたり前だがスライムの魔核とは比較にならない。
俺達は残された魔核を三個とも拾い、そのまま先へと進んでいく。
「もうかなり近いところまで来てるはずなんですよね」
「そうなの?」
「マッピングの感じからすると、もういつボス部屋の扉が現れてもおかしくないと思う」
「そうか。じゃあいよいよだな」
「はい、いよいよですね」
俺達はその後三十分ほど歩きついに十七階層の終わりへと辿り着くことができた。