A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (627)
第624話 階層主
「あいりさん、あれってどうやって倒せばいいんですかね」
「スケルトンと同じだろう。頭部の完全破壊が必要になるんじゃないか?」
「そうですよね。でもあそこに届くとなると遠距離攻撃しかないですよね」
「足元から削っていけば、いけるだろう」
あいりさんと言葉を交わしながら向かう。
階層主は思っていた通りドラゴンだった。
階層主なので中位種という事はありえないので、上位種か更にその上かもしれない。
確かに中位種よりも大きい。
間違いなく上位のドラゴンで離れていても圧が凄い。
ただ普通のドラゴンと明らかに異なる点が二点ある。
一つはドラゴンの背に敵と思しき奴が乗っている。
つまりドラゴンに敵が騎乗している。
「ドラゴンライダー?」
この姿はまさに竜騎士、ドラゴンライダー。
そしてもう一点決定的に違うのは、ドラゴンも乗っている敵も骨でできていた。
肉が一切見られないスカルドラゴンとでもいうべき存在。
つまりは肉体的な急所を持たない敵だということだ。
あいりさんの言うように頭部を完全に破壊する必要があると思うが、かなりのサイズなので俺の剣を振るっても頭部には届かない。
騎乗している敵が俺達の方を見た。
見たといっても目がないのでこちらを向いたと言うべきだろうか。
しゃがれた声でなにやら呪文のようなものを唱えている。
このスケルトンはナイトではなくウィザードか?
詠唱を警戒して一度足を止めて様子をうかがうが、すぐさまスカルドラゴンに劇的な変化が起きた。
骨だけだった身体の周囲を黄色っぽいものが覆い始めたのだ。
この色はまさか……
「海斗、あれはさっき戦った黄色いドラゴンと同じじゃないのか?」
「やっぱりそう見えますよね」
そこにはスカルドラゴンの周りを泥が覆い、スカルマッドドラゴンとでも言うべき姿があった。
ただでさえ攻撃しづらそうなのに、更に防御力が上がってしまったようだ。
『アイアンボール』
あいりさんがスキルを発動して鉄球を叩き込むが、先程の黄色いドラゴンの時と同様に外装に触れた瞬間、勢いを失いゆっくりと飲み込まれていった。
やはり先程のドラゴンと同種の防御だ。
先程はこの外装に穴を開けてから攻撃を叩き込んだが、このドラゴンには叩き込むべき肉がない。
思った以上に厄介だな。
『ライトニングスピア』
ミクの放った雷の槍が一瞬外装の泥を飛散させたが、効果はそれだけですぐに元に戻ってしまった。
骨だけなので雷で痺れるということもないようだ。
ベルリアが突っ込んでいく。
スカルドラゴンが口を開く。
まさか骨のくせにブレスを放つのか?
「ベルリア!」
ベルリアに向けスカルドラゴンが放ったのはファイアブレス。
炎がベルリアに向かって一気に押し寄せる。
ベルリアも炎の勢いに押されてその場から後方へと飛んで逃れるが炎のまわりが早くベルリアの皮膚を焼く。
「くっ……『ダークキュア』」
ダメージを受けたベルリアがすぐさま回復スキルを発動して自らの傷を治す。
回復したベルリアがすぐさま体勢を立て直し再びスカルドラゴンに向かって構える。
それにしてもブレスによる炎の威力が今までのドラゴンとは段違いだ。