A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (635)
第632話 ベルリア離脱
俺は残る一体のスケルトンと相対する。
俺の中のスイッチはまだ入ったままのようで、スケルトンの動きはより遅く感じる。
右側に移動されると死角になるので、視界の左側にとらえらるように俺は敵に向かって右側から回り込んで攻める。
片目だと普段と距離感が微妙に異なるようで、振るった剣が届かず空をきってしまったが、今度はスケルトンの剣を避けると同時に思い切って踏み込んでスケルトンの頭部を切りつける。
今度は魔氷剣がしっかりと頭部を捉えた。
『ドンッ』
ほぼ同時に死角である右側面から何者かのタックルをくらってしまった。
「ぐっ……」
俺は、不意を突かれて完全にバランスを崩し地面へと倒されてしまった。
「マイロード……」
俺を押し倒した敵に目をやるが、そこにいたのはスケルトンではなくベルリアだった。
ベルリアを見ると炎に焼かれて皮膚がただれている。
あれほど注意していたが、右目の視覚が奪われて、スカルドラゴンから注意が外れていた。
そのせいで死角からスカルドラゴンのブレスをくらいかけたところをベルリアが身を挺して助けてくれたのだろう。
「ベルリア! 早く回復を!」
「マイロードご無事で何よりです」
「そんな事は早く回復を!」
「問題ありません『ダークキュア』」
ベルリアがスキルを発動して、ただれた皮膚が回復を始める。
「大丈夫か!」
「私は大丈夫です。マイロードこそお怪我を『ダークキュア』」
ベルリアが俺にも回復スキルを発動してくれ俺のこめかみの傷が治癒するが、目の中に入った血が消えてなくなったわけではないので、急いでその場から離脱して、マジック腹巻からミネラルウォーターを取り出して右目にかけて洗い流す。
俺が離脱している間ミクがスピットファイアを連発して時間を稼いでくれている。
「ベルリア助かった」
「ご無事で何よりです」
洗い流して見えるようになった両目でベルリアを見ると火傷は回復しているものの、苦しそうに肩で息をしており、立つのもやっとといった感じだ。
ステータスに表示されるHPとは別の体力ともいえる部分が、明らかにすり減っている感じだ。
俺も入院したので経験済みだが、これはポーションや回復スキルではすぐには回復する類いのダメージではない。
「ベルリア、お前もう……」
「さあ! あのスカルドラゴンを退治しましょう!」
「ベルリア!」
べルリアが、威勢のいいセリフでスカルドラゴンへと向かおうとするが、呼び止める。
今までの戦闘で、ベルリアがこれほど消耗しているのは、ほとんど見たことがない。
スカルドラゴンの注意を引くために一体何度その身を焼かれたのだろうか。
「マイロードどうされましたか? さあ倒しましょう」
「ベルリア、もう十分だ。これから先はベルリアはミク達と後方支援だ。魔核でMPを回復してサポートに回ってくれ」
「ですが……」
「スカルドラゴンは俺達でなんとかするから大丈夫だ」
「……わかりました。後はおまかせ致します」
周囲を見回すと既にシルも三体のスケルトンを排除していた。
あいりさんはまだ二体のスケルトンと切り結んでいるようだ。
「ミク、あいりさんのフォローを頼んだ! シル、俺達でスカルドラゴンを倒すぞ!」
「はい」