A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (646)
クリスマスSS 1
ダンジョンを切り上げてから急いで家に戻る。
家に戻ってすぐにシャワーを浴びる。
ダンジョンで汗と埃に塗れているので、いつも以上に入念に洗い落とすが、あまり時間がないのでさっさと浴室から出る。
「さむ〜」
身体が完全に温まる前に出てしまったので、ヒートショックを起こすんじゃないかと思うほど寒い。
震えながら急いで身体を拭いて、髪を乾かしながら服を着る。
それから速攻でカレーを食べてプレゼントに買ったテディベアのぬいぐるみの紙袋を手に家を出る。
春香とクリスマスのイベントを過ごすのは小学校の時にクラスのクリスマスパーティがあって、それ以来だが
自然とテンションがあがる。
待ち合わせ場所の駅前まで歩いて行くが、クリスマスだけあってほぼカップルしかいない……
普段街に溢れている世の中の非モテの男性達はいったいどこに行ってしまったんだろう。
ダンジョンにもそれなりの数の男性はいたが、まさか全員がダンジョンに潜っているはずはないので、家に篭っているのかもしれない。
俺も去年まではダンジョンに篭っていたので気持ちはよくわかる。
独り身でこの景色を見ているだけでHPとMPがガリガリと削られる……
ただ俺も独り身には違いないが今年は春香と一緒だ。それだけで景色が全く違って見える。
駅前でしばらく待っていると春香がやってきた。
「お待たせ」
「あ、ああ、うん」
そこには午前中の制服から着替えた春香が立っていたが、白いコートを着ていてその姿は正に冬の妖精。
「このコート新しく買ったんだけど、どうかな」
「うん、いいです」
「そう? 変じゃない?」
「変じゃない。むしろ素晴らしいです」
「今日の為に買ったのもあるから、そう言ってもらえてよかった」
今日の為にコートを買ってくれたのか? 白のコートが似合ってて最高に可愛い。
今日は本来なら春香と一緒にクリスマスディナーを食べたかったが、俺は完全にミスを犯してしまった。
クリスマスの飲食店を舐めていた。
一週間前に予約サイトで予約しようとしたら、全てのお店が満席で予約不可になっていた。
焦って電話もかけたが全て断られてしまった。
俺には縁がなかったので、よくわかっていなかったが、クリスマスに考える事はみんな同じようで、クリスマスビキナーの俺は完全に出遅れそして惨敗してしまった。
仕方がないので、スマホで徹底的にクリスマスイベントを調べて検討に検討を重ね、春香に提案したのは夜の公園のイルミネーションを見て回る事だ。
イルミネーションを見て回るのは、クリスマスのイベント人気二位だったので、近くでイルミネーションがあるところを調べて行く事にしたのだ。
電車で三駅先まで行き、徒歩で目的の公園へと向かうが、周囲には既に大勢のカップルがいる。
「こんなにいるんだ……」
「イルミネーションは人気があるからね」
結構大きな公園だったので、ゆっくりと回れるかと思っていたが公園に着くとカップルが溢れていた。
なんでイルミネーションにこんなに人が……
イルミネーションを見に来たのに、カップルしか見えない。
失敗したかもしれない……
クリスマスにはビギナーズラックはないのか……