A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (649)
第643話 決死の一階層
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよう」
朝になり、今日からは昨日決めた通りに一階層に潜る。
ゴールデンウィークはあと三日。
あと三日でどうしても結果が欲しい。
「それじゃあ、このまま一階層に向かいますね」
「手順とかはあるのか?」
「特にはないんですけど、シルがスライムを見つけたら倒す感じですね」
「まあ、とりあえずやってみよう」
「そうですね」
俺達はメンバー全員で一階層を進んで行く。
「ご主人様、前方にスライムです」
「ああ、わかった」
俺はいつものようにスライムへと走り殺虫剤ブレスで倒した。
「見事なものだな」
「そうですね。本当に殺虫剤だけで倒せるんですね」
「これは、本当にシークレットだから誰にも漏らさないで欲しいんだ」
「ああ、大丈夫だ。約束しよう」
「シークレットって、誰も知りたがる人いないんじゃない?」
ミクは本当に失礼だな。まだこの殺虫剤ブレスの真価がわかってないのかもしれない。
その後三回程スライムと交戦したが、いたって順調だ。
「海斗は普段ずっとこれを繰り返してるのよね」
「まあ、放課後はだいたいね」
「ある意味すごいわね」
「何がだよ」
「普通二階層より下に潜った事のある探索者ならこの作業はきついわよ」
「そうかな」
「変化が乏しいから黙々とやるしかないじゃない。派手さとは対極に位置してる。冒険感がほぼ無い」
「いや、スライムを倒すのにも創意工夫を凝らせば、ペースアップするから」
「そんなもの?」
「ああ、そんなものだ」
更にその後三度スライムを狩った。
「海斗、ちょっといいだろうか?」
「はい、なんですか?」
「このまま全員で回っても海斗一人で回るのと大差ないだろう。それなら私とミクはそれぞれ一人で周る方が効率的だろう」
「確かにそうですね」
「それじゃあ、ここで別れよう。17時に入り口に集合でいこう」
「わかりました。それじゃあ一応三本ずつ渡しておきますね」
「やはりそれを使うのか」
「もちろんです。これが一番ですからね」
「………わかった」
俺はマジック腹巻きから殺虫剤を六本取り出して、ミクとあいりさんに三本ずつ渡しておいた。
これで、ようやくミクとあいりさんもスライムスレイヤーへの第一歩を踏み出したとも言える。
ただ二人とも殺虫剤を受け取る時に微妙な表情だったのは、少し引っかかるが、殺虫剤ブレスを実際に愛用すれば必ず手放せなくなる事だろう。
今日忘れずに帰りの途中でドラッグストアに寄って殺虫剤を買い増ししておこう。
メンバーの二人が先に行ったので、俺はいつも通りのメンバーでスライムを狩りに行く。
「そういえば、ルシェは何もしていないんだから、一人でスライムを倒してくればいいんじゃないか?」
「ご主人様、私達サーバントは、長時間ご主人様の側を離れる事はできないのです。だからルシェ一人でスライムを倒して周るのは少し難しいです」
「そうなのか」
「そんな事も知らなかったのか。それでも本当に主なのかよ」
そうは言うけど、サーバント使いは少ないからマニュアル的なものはほとんど無いので実戦での手探りなところが大きい。
しかも以前二階層へルシェが一人で行っていた事があるので、少しぐらいなら大丈夫なのだろう。
もしかしたらサーバントについて他にも知らない事はいっぱいあるのかもしれない。