A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (655)
第648話 運命の三日目
昨日の夜はあまり眠る事が出来なかった。
メンバーへの態度とは裏腹に自分の感情と思考をコントロールする事がうまく出来ずに、寝つけなかった。
スライム相手なので、寝不足でも何か起こる可能性は限りなく低いが、七〜八時間歩き続ける事を考えるといい事とは言えない。
それでも今日でゴールデンウィークは終わってしまうので、身支度を済ませていつもより早めに家を出る。
待ち合わせの三十分前にダンジョンの入り口に着いたが、既にミクとあいりさんは待っていた。
「二人共早いですね」
「海斗も三十分前よ」
「まあ、そうだけど」
「まあ、三人共気合いが入っている証拠だな」
「はい」
あいりさんはこう言っているが三人共気持ちは一緒だろう。
『約束』と『不安』
一人でいると押しつぶされそうになる。
メンバーと一緒ならどうにかなる。ダンジョンに潜ればなんとかなる。
「ちょっと早いけど準備しながら行きましょうか」
「ああ」
「そうね」
俺達は装備を整えて三日目の一階層へと臨んだ。
正直今日ばかりはルシェとベルリアを喚ばない事も考えたが、確実にマイナス要因であるとは言い切れない為に結局いつものスタイルでスライムを狩っていく事にした。
あとはシルの恩恵と俺のスライムスレイヤーとしての幸運に賭けるしかない。
三日目のファーストスライムは黄色のスライムだ。
黄色は赤や青に比べれば、出現率が低いのでなんとなく幸先がいい気がする。
「ベルリア!」
「マイロード、お任せください」
更に精度の上がった連携で黄色のスライムを消滅させる。
少しだけレアなスライムとは言え、あくまでも普通のスライムなので当然魔核もいつも通りだ。
はやる気持ちを抑えきれずに、移動が早足から駆け足へと変わる。
ただこれがよくなかった。
レベルアップしてステータスの補正を受けているとはいえ、フル装備の状態で走れば当然体力が減る。
しばらくの間は気持ちが体力の減少を誤魔化していたが、三十分を過ぎたあたりで完全に俺の足は止まってしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ。 くそっ!」
情け無い。三十分程度走っただけなのに完全にグロッキー気味になってしまった。
足と身体が重い。
前に進む一歩がなかなか出ない。
「ご主人様、このまま無理をするよりも一度休んだ方がいいと思います」
「いや……そうだな。五分休もう」
俺が少しでも多くのスライムを狩ろうと焦ったせいで、余計効率が下がってしまった。
「マイロード、お気持ちはわかりますが、昨日までも、ほぼ限界まで効率を追求しています。これ以上は難しいと思われます。昨日までのスタイルに戻しましょう」
「……ああ、そうだな」
俺よりもサーバント達の方がよほど状況を冷静に判断出来ている。
スライムスレイヤーなんてスキルがあっても、まだまだ全然だな。
それにしても休憩をすすめてくれたシルに俺に助言をくれたベルリア。
俺は本当にサーバントに恵まれているなぁ。
「後先考えずに走るってただのバカだろ。しかも一人だけダウンってダサッ! 身の程をわきまえろ。身の程を!」
その通りなので言い返す言葉を持たないが、コイツは……