A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (663)
第656話 可能性
「支援型という事は残りのスキルも補助か回復系の可能性が高い。そしてこの『ユグドラシル』というスキルだ」
「このスキルがどうかしたんですか?」
「ユグドラシルという名前に聞き覚えはないか?」
「いや、聞いた事ないと思います」
「私はあるわ」
「え? ミクは知ってるのか?」
「世界樹って知らない?」
「世界樹? よくファンタジー物とかで出てくるやつだよな」
「そう。その別名というか呼び名がユグドラシルなのよ」
「じゃあこのスキルは世界樹に類するスキルという事か」
世界樹といえば、昔からあるファンタジー物では生き返ったり、全ての状態異常を回復したりする定番ともいえるアイテムだったはずだ。
「その可能性があるという事だ。もちろん世界樹には他の意味合いもあるとは思うが、支援タイプのサーバントが使用する『ユグドラシル』というスキル。しかも『キュアリアル』とは別に存在するスキル。キュアリアルとは違う効果を持った回復スキルなんじゃないだろうか」
「そうですね! 確かに『ユグドラシル』から連想するのはそれですよね」
「でもそれはあくまで可能性で、使用してみない限りわかりませんよね。それに回復系のスキルだったとしても本当にヒカリンの症状を治すようなスキルとは……」
「確かにそうだが、私にはこれがシル様の示す正解だと思えるんだ」
「あいりさん……サーバントカードは一度使ってしまうともう売り物にはならないんですよ。使って違いましたは通用しないんです。わかっていますか? シルだって明確な未来が見えているわけじゃないんですよ」
「ああ、わかっている。だが私にはこれが正解だとしか思えないんだ」
「ミクはどう思う?」
「あいりさんの話を聞いて、私もこれが正解だとしか思えない『ユグドラシル』でヒカリンの病気が治るんじゃないかしら」
ミクもか。本当にダメな時のことをわかっているのか?
もしサーバントを召喚して『ユグドラシル』が期待した効果を示さなかった場合、もう俺達には霊薬の代価となるものは何も無くなってしまう。
それをわかっているのか?
あいりさんの言葉は確かに正しいようにも聞こえるが、それはあくまでも前提があっての事だ。
どの方法かで必ずヒカリンが助かるルートが存在するという前提。
あいりさんのそれは、あくまでその前提ありきで消去法により導き出された答えであり、その答えには思いっきりバイアスがかかっている。
あいりさんの根拠はシルによる言葉のみ……
リスクが高すぎる。
あまりにもリスクが高い。
ダメだった時の失う物が大きすぎる。
文字通り全てを失ってしまう。
「い、いや、どう考えても無理だろ。そんな一か八かみたいな事は出来ない」
「海斗、別に今すぐ決めろと言ってるんじゃない。ただ選択肢のひとつだという事だ。リミットがあり今の段階で完全な正解が無い以上、そういう選択もあるんじゃ無いかという事だ」
「だ、だけど……l
その選択をしてダメだった時にヒカリンになんて言えばいい。
俺がその選択をしてダメだった時には、俺がヒカリンを殺したと同義だ。
俺にそんな事はできない……