A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (668)
第661話 ティターニア
俺は、病院を後にしてダンジョンへと急いだ。
ヒカリンが決断した以上、行動は少しでも早い方がいい。
ダンジョンへと到着した俺は、そのままの格好で一階層のいつもの場所へと向かう。
いつもの場所は、日曜日だと言うのに人の気配はしない。
「ご主人様、そのカードを使われるのですね」
「ああ、そう決めたんだ」
「大丈夫ですよ。きっと良い結果が待っています」
「そう願うよ」
「早くしろよ。フェアリークイーン? クイーンってなんか偉そうな名前だな」
「ルシェは一応プリンセスだもんな。ちょっと負けてるかもな」
「海斗死にたいんだな? それは死にたいと言う意思表示だな?」
「冗談だって。それじゃあ使うぞ? 『ティターニア』召喚!」
俺にとっては四度目となるサーバントの召喚。カードから閃光が放たれ目の前にはサーバントが顕現していた。
もう驚く事は無いがもちろん幼女の姿だ。サーバントというものがそういう仕様なのかそれとも俺のサーバントがそうなのかはわからない。ただ今回はシルとルシェよりも少し小さく幼いようだ。
ルシェ達よりも十センチぐらいは小さい気がする。
薄いピンク色のふわりとした髪に目の色もピンク色だ。
背中には妖精である事を示す小さな羽根が生えているが、ふわっとして全身が可愛らしい感じに溢れており、ロリ属性の無い俺ですら庇護欲をそそられる感じだ。
それにキラキラ感がすごい……
人間のアイドル数十人を集めたよりもずっと眩しい!
これは、その属性の探索者であれば数億円出したとしても競り落としたかったに違いない。
「あの……あなたがマスター。わたしはティターニアです」
透き通った小さな声が聞こえてきた。
「ああ、俺は高木海斗だ。よろしくな」
「はい……よろしくお願いします」
やっぱり声が小さい。もしかして初対面で照れているのか?
「私が長姉のシルフィーです。よろしくお願いしますね」
「はい」
「わたしが長女のルシェリアだ。よろしくな」
「はい……」
この微妙な争いはなんなのだろうか?
ティターニアも若干めんくらっているようにも見える。
「私は御三方の剣たるベルリアです。よろしくお願いします」
「はい……。わたしはティターニアです。よろしくお願いします」
サーバント同士での挨拶が終わったようだが、やっぱり声が小さいな。
ただ見た目も含めて完全に末妹に決定だな。
今はそれよりもスキルだ。
俺はすぐにティターニアのステータスを確認する。
まずひとつ目のスキル。
ウィンガル …… 戦闘中対象のMP以外のステータスを二十パーセント上昇させる。
これは、能力の底上げ。いわゆるバフか。
二十パーセントの上昇はかなり大きい。
レベルが低かった時にはほとんど意味を成さなかったと思うが、今なら仮に戦闘中にこれを使えば技術は置いておいても、俺のステータスがベルリアに近いところまで伸びることになる。
ただこれで確定した。
ティターニアは完全に支援型のサーバントだ。
武器を所持していない事から、このスキルが攻撃魔法かとも思ったが、実際にはバフだった。
という事は今の段階でティターニアは攻撃する術を持たない完全なる後方支援型。
もちろん、BPが66あるので武器を持たせればそれなりに活躍してくれるとは思うが、これで『ユグドラシル』が補助もしくは回復系のスキルである可能性が一層高まったとも言える。
俺はそのまま二つ目のスキルを確認する。