A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (684)
第676話 早い気がする
今日は丸一日潜れるので、ゴブリンとの戦闘もかなりこなせるはずだ。
それに今更この状況でシルの能力を隠しても仕方がないので、シルにゴブリンを探してもらう事にする。
「ご主人様、この先にモンスターです。野村様もご準備をお願いします」
「えっ……こんな感じでわかるんですか? すごくないですか? 海斗先輩ずるくないですか?」
まあ確かにずるいと言えばずるいけど、日常的にソナーや魔道具を使用しているパーティもいるのだから問題の無いレベルだろう。
少し歩くとゴブリンの姿が小さく確認できた。
「ベルリア、野村さんのサポートを頼む。攻撃はいいから危ない時は助けてあげてくれ。それとティターニア、野村さんに『ウィンガル』を使ってみてくれるか?」
ティターニアを戦闘に連れて歩くのは初めてなので、この機会にスキルも試して見る事にする。
「はい……わかりました。精霊の加護を『ウィンガル』」
ティターニアがスキルを発動すると野村さんの身体がうっすらとピンク色の光に包まれる。
「先輩これは……?」
「ああ、ステータスを確認してみて」
野村さんはまだそこまでステータスが高く無いので、劇的な効果を見込む事は出来ないが、LV4でステータス値が少しでも上がれば動きに余裕が出るはずだ。
「もしかして、ステータスが上がってませんか?」
「ああ、少しだけど上昇しているはずだ」
「これってLV5ぐらいになってますよね。いけそうです!」
ティターニアのスキルによるステータスアップは野村さんの精神面にもプラスに働いたようで、ゴブリンを前にして明らかに昨日よりも表情が明るい。
野村さんがボウガンを構えてゆっくりとゴブリンに向かって進んでいく。すぐ斜め後ろをベルリアがついて歩く。
俺は少し距離をおいた状態で、後ろをついて行く。
「ギャギャギャヒャ!」
こちらに気づいたゴブリンが野村さんに向かって走ってくる。
ここまでは完全に昨日と同じシチュエーションだ。
「今のわたしは昨日とはちがう!」
野村さんが気合を入れ直してボウガンのトリガーに指をかける。
昨日同様に少し離れた距離から一射目を放つ。
一応ゴブリンに命中するが、倒せてはいない。
焦ったか?
昨日と同じ状況にそう思ってしまったが、そうではなかったようだ。
野村さんはダメージを受けたゴブリンが襲いかかって来るのを、冷静に狙いを定めて六〜七メートルまで接近した瞬間に二射目を放った。
今度は完全にゴブリンの頭部を捉えて消滅に追いやった。
昨日は同じ状況でも、焦りから一射目を離れた位置から放ち、しとめ損ない迫るゴブリンに慌てて二射目を放った。後方から見ていたのでわかるが今のは明らかに違う。
しっかりと狙い、意図的に遠目から一射目を放った。そして傷を負ったゴブリンを冷静に二射目でしとめた。
恐れや焦りからくるブレが身体に見て取れなかったのであれは最初から二射目を想定していたのだろう。
「海斗先輩やりましたよ! どうですか? あっ! わたしレベルアップしたみたいです」
どうやらさっきのゴブリンを倒した事でLV5にレベルアップしたようだ。
そして先程まで身体を包み込んでいたピンク色の光が消えている。
やはりティターニアのスキルの効果は戦闘が終わるまでの間に限定されるようだ。
それにしても、野村さんは二日目で既に慣れてしまっているけど、これって普通なんだろうか?
俺は、一体目を倒してから慣れるまでかなり時間を要したと思うんだけどな……