A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (686)
第678話 スケルトンは眠らない
下級モンスターであるスケルトンは、そこまで戦術的な戦いをしてくるわけではない。
空振った野村さんにそのまま直線的に二撃目を放ってくる。
当初のプランが崩れて野村さんも焦りがあるのだろう。本来であれば避ける事が最善であるはずのスケルトンの斬撃をタングステンロッドで受けて防いだ。
「んん〜っ!」
どうにか受け止めて防ぐことには成功したが、そのまま徐々に押されている。
LV5の彼女のステータスがどのぐらいの数値かはわからないが、まだスケルトンと力比べをして勝てるレベルでは無さそうだ。
必死で押し返そうと耐えているが、完全に力負けしている。
力の根源とも言える筋肉が一切ないのに、この膂力。まさにモンスターの神秘と言っても過言ではない。
ただこのまま力比べを続ければ野村さんは押し負けてしまう。
もう少し様子を見ても良かったのかもしれないが、俺には責任がある。
俺がベルリアに目線で合図を送るとベルリアが割って入り、スケルトンを斜め前方から蹴り飛ばした。
「野村さん! 体勢を立て直して、足狙いだ!」
「はいっ!」
野村さんが肩で息をしながらタングステンロッドを構え直してスケルトンが立ち上がるのをその場で待つ。
スケルトンがゆっくりと立ち上がり再び野村さん目掛けて歩き出す。
ベルリアも手加減して蹴っているのでスケルトンに大きなダメージは無い。
スケルトンは、先程同様に距離を詰めてから手にある剣を振りかぶり野村さんに斬りかかるが、ほぼ同じパターンなのでタイミングを掴んだ野村さんが上手くサイドに躱し、そのまま踏み込んで、タングステンロッドをスケルトンの向こう脛に叩き込んだ。
「ガッ!」
タングステンロッドが硬質な物に当たる音がする。
「かった〜」
力が足りないのか、打撃が浅かったのかは分からないがタングステンロッドの一撃を狙い通り脛に当てたものの想定したように足の骨が砕ける事は無かった。
ただ確実にダメージはある。その証拠にスケルトンの動きが止まっている。
「もう一撃だ!」
「はいっ!」
野村さんが俺の声に反応して、すぐさま初撃と同じ箇所にタングステンロッドを叩き込んだ。
「ボギン!」
今度こそスケルトンの骨は野村さんの二撃目によって叩き折られ、スケルトンはその場へと倒れ込んだ。
こうなればあとは頭蓋骨を砕くだけだ。
「海斗先輩やりました! これで決まりですよね!」
「ああ、後は頭蓋骨を砕くだけだけど、油断はするなよ。そんな状態でも腕は動くんだからな」
「わかりました」
野村さんは慎重に倒れたスケルトンの後方へと回り込んでゆっくりと近づいて、タングステンロッドを頭部へと振り下ろした。
「ガンッ」
やはり力が足りないのか一撃で頭蓋骨が砕ける事は無かった。
「やっぱり硬いです。砕けるまでいきますよ!」
そこからは、動けないスケルトンに向かって野村さんがタングステンロッドを振りかぶり連撃を加え一方的に攻め立て消滅へと追いやった。
「やりました〜。手が痺れちゃいましたよ。初スケルトンですけどベルリアくんの手を借りちゃいましたね」
「まあ、初めだからしょうがないけど、その後は一人で倒したんだから大したものだよ」
「いえ、はじめての近接でしたけど、焦って身体が動かなかったです。骨も一撃じゃ無理だったし、一人じゃまだまだ危ないです」
しっかりと自己分析ができているようなので、野村さんが調子に乗って突っ走る事は無さそうだ。
真司と隼人は完全にハイになっていたけど、落ち着いているしやっぱり野村さんの方が優秀な気がする。