A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (695)
第687話 壁を越える
進んで行くとワイルドボアが三体とヘルハウンドが一体が待ち構えていた。
俺と野村さんは、すぐに武器を構えて一番右側のワイルドボアを倒す事にした。
「野村さん、焦らなくて大丈夫だからな」
「わかってます。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
そう言うと野村さんは大きく深呼吸をしてから、その場で数回軽くピョンピョンと飛んでからボウガンの照準をワイルドボアへと合わせた。
野村さんのボウガンが向けられている事を感じ取ったワイルドボアは、こちらに向けて猛然と駆け出して来た。
一気に距離が詰まるが、野村さんはその場から冷静にボウガンの矢を放つ。
一射目がワイルドボアの肩口に刺さるが、止まらない。続け様に二射目が放たれ、二射目も見事命中するが、怒り狂ったワイルドボアはそのまま突進して来る。
このままでは野村さんがやばい!
俺は前に出てワイルドボアを倒そうかと踏み出そうとしたが、野村さんに視線をやると怯えた様子は無く、しっかりとワイルドボアを見据えていたので思い止まる。
そしてワイルドボアが野村さんの立っている場所を通過する手前で、野村さんは大きく横方向にジャンプして回避しそのまま、ワイルドボアの背後に向けてボウガンの矢を二本放ち消滅へと追いやる事に成功した。
「や、やりました〜」
「おぉ、やったな!」
「怖かった〜」
「全然そんな風には見えなかったけど」
「昨日ので怖くなって、上手く動けなくなってたんですけど、家に帰ってからよく考えたんです」
「うん」
「これだけ海斗先輩にサポートしてもらってこのままじゃ終われないじゃないですか。自分でお願いしておいて昨日の出来じゃ海斗先輩にも申し訳ないし、自分でも情けなくて。だから朝起きて絶対に今日は怯まないって決めてたんです」
「決めてたって……決めて動けるって凄くないか?」
「気持ちの問題というか、そんな感じです」
「そうなんだ……」
昨日は明らかに動きが鈍っていたのに、今は普通に動けていた。
確かに気持ちの問題なのは間違い無いが、そんな簡単に切り替えができるものなのだろうか?
俺はゴブリンに対して、トラウマを克服するのに一年近くかかったというのにたった一日で克服してしまうとは……
野村さんのメンタル構造が俺とは全く違うのか、それとも女の子とはこういうものなのだろうか?
この後も野村さんは臆する事無く三階層のモンスターを倒して周り、この日のうちの無事レベル7へと到達した。
結局野村さんとは月末の土曜日までほぼ毎日一緒に潜ったが、思った以上に順調に成長したと思う。
パーティであれば十分三階層でもやっていけると思う。
そしてギルドの日番谷さんからも連絡があり、パーティ候補を二つ見つけてもらった。
一つは女の子ばかりのパーティで、もう一つは女の子一人に男三人のパーティだった。
一応一緒に潜ってから決めるようだが、気持ち的には女性ばかりのパーティに惹かれているようだ。
それにしても、俺の時はなかなかパーティが決まらなかったのに、女の子の探索者はやっぱり人気があるのかもしれない。