A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (699)
第691話 腕時計の使い道
春香からもらった腕時計をして、色んな話をしながら水槽の魚を見ているとあっという間に時間が過ぎ去り、既に時間は十四時に近づいている。
「春香、そろそろ出ようか」
「うん、じゃあ次はお花を見に行こうよ」
「お花?」
「うん、電車ですぐだから」
春香に連れられて移動すると、公園のような所に着きそこには一面にラベンダー畑が広がっていた。
「これってラベンダー?」
「そう、ここで毎年育ててるんだって。すごいよね」
「俺、実物見るのは初めてかも」
「わたしも初めてだよ。可愛いし綺麗だね」
ラベンダーって北海道にしか咲かないのかと思ったけど、ここには一面に咲いている。特に花に興味の無い俺が見ても、ちょっと感動するレベルだ。
「海斗って普段ダンジョンに潜ってるから、たまにはこんなのもいいかなと思って」
「確かにダンジョンとは違うな。春って感じがして気持ちいいよ」
「よかった」
ここは俺一人では絶対に来ることのない場所だが、春香となら何度でも来たくなる場所だ。
俺にとっての癒し、憩いの場はダンジョンの一階層だが、ここはそれとはまた違った方向性で癒される。
陽気も手伝って本当に気持ちがいい。
「春香は結構お花とか興味あるの?」
「うん、わたし写真撮ったりするでしょ。だから季節のお花とか咲いている場所は時々ね。ここは夏になるとひまわり畑になるの。今まで夏しか来た事は無かったけど、ラベンダーもいいかなと思って」
「ひまわり畑か〜。それもいい気がする」
「夏にまた一緒に来ようよ」
「うん、またあのカフェに行ってから来ようか」
いい流れで春香と夏の約束も取り付ける事が出来たのでよかった。ひまわりも数本咲いているのは見た事あるけどひまわり畑は見た事が無いので、今からちょっと楽しみだ。
それにしてもお花畑の中に佇む春香は、もう完全に花の妖精だ。思わずスマホで連写してしまった。
ラベンダー畑で一時間程、楽しく二人で散歩してから電車に乗り春香の家に向かう事にした。
「お邪魔します」
「あらいらっしゃい。海斗くんお誕生日おめでとう。今日は春香が張り切ってご飯作るから楽しみにしといてね」
「はい、ありがとうございます」
春香の家に着くと春香のママが出迎えてくれたが、リビングに向かうとそこには春香のパパが座っていた。
「お邪魔します」
「ああ、こんにちは」
今日は日曜日。それは当然パパもいるよな。春香のパパは一般的には親しみ易い人だとは思うけど、やっぱりなんとなく空気が重い。
春香がそのまま料理の準備に取り掛かったので必然的にリビングでは俺と春香の両親の三人で過ごす事となった。
お互いに何も悪い事はしていないのに空気が重い。いや、これは俺が一方的にプレッシャーを感じているだけか。
その証拠に春香のママはニコニコと笑顔だしパパも至って普通だ。
春香、晩御飯はまだ出来ないのだろうか?
時計を見ると席についてからまだ二分しか経過していなかった。
春香のくれた時計はデジタル式なので秒単位までしっかりと確認する事が出来たが、壊れているのかと思ってしまうほどに時間の経過が遅く感じてしまう。