A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (701)
第693話 コミュニケーション
ヒカリンのリハビリは順調に進み、既に通常通りの生活を送れているとミクや春香から聞かされている。
今週末からはいよいよ探索にも加わる予定なので、俺はそれに備えて一階層で魔核を集めている。
十七階層でもかなり苦戦したので、その先の十八階層への準備は欠かす事が出来ない。
おそらくティターニアにも活躍してもらう必要があると思われるが、当然その分魔核の消費が増えるのは間違いない。
現状でも、ルシェを中心にかなり燃費が悪いのに、今まで以上に事前のスライムの魔核収集は必須だ。
「ルシェ、十八階層に降りたら少しは節約というか我慢してくれよ」
「は〜? 今でも十分我慢してるだろ。これ以上節約とかありえないんじゃないか? なあベルリアもそう思うだろ」
「はっ、まあ、そうですね。ルシェ姫は十分に我慢されているかと」
「だろ〜海斗、そういう事で無理だな」
「そう言う事って……」
まあ、ルシェもベルリアもこう言う反応なのは十分に予測できたので特にショックもないが、スライム狩りに専念するしかないな。
「ご主人様、私は少しであれば我慢も……」
「ああ、シルありがとう。だけど大丈夫だ。なんとかするよ」
「はい」
やっぱりルシェと違ってシルは優しい。気遣いの出来るいい子だが、その心遣いとは違って燃費は悪いんだよな〜。
「ティターニアも十八層では頼んだぞ」
「……はぃ」
やっぱりティターニアの声が小さいな。
「ティターニア、少しは、俺達のパーティに慣れたか?」
「そう……ですね」
「もしかしてルシェが怖いのか? 口は悪いけど怖くはないから安心していいんだぞ」
「いえ……そう言うわけでは」
「海斗! わたしのせいみたいな言い方はやめろ!」
「ティターニア、戦いで厳しい状況の時も絶対にあるから、出来ればもっと仲良くなって連携を深めておきたいんだ」
「がんばり……ます」
う〜んどう考えても馴染んでないよな。他の三人とは違うタイプなのでどうすればいいんだろう。昨日は大人への対応に苦慮してしまったが、今日は子供へ対応に困ってしまう。
やっぱり俺ってコミュニケーション能力が低いんだろうか?
「ティターニア、何か趣味ってあるのか?」
「趣味ですか? 特には……」
「……そうか」
これは質問を間違えたか?
「好きな物とかあるのか?」
「好きな物……ですか? お花……」
「そうか、花が好きなのか。いい事だよな。うん花はいいな」
「はい」
やばい、花か。昨日ラベンダーを見たけど全然詳しくないので話を広げる事が出来ない。
「それじゃあ好きな食べ物とかはあるのか?」
「好きな食べ物……この前もらった魔核が……おいしかったです」
「そうか。魔核か。サーバントはみんな魔核好きなんだな」
「はい、好きです」
魔核について話すティターニアの顔が僅かに綻んで嬉しそうにしている様に見える。
これは、仲良くなる為にもティターニアにも魔核をケチる訳にはいかないよな。
俺はこの日から更にスライム狩りに集中する事になった。
どうやら万全な体制で十八階層に臨むことが出来そうだ。