A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (709)
第701話 トロールゾンビ
斬りかかった俺とベルリアにゾンビが腕を振るい攻撃してくるが、鈍いように見えてサイズがサイズなのでかなりのスピードと圧力で拳が迫って来る。
俺はゾンビの腕に集中して迫る拳を躱すが、鼻先を風圧が襲う。
ベルリアも同様に避けたようだが、気を抜く間もなく、トロールはそのまま腕を振り回して追撃をかけて来た。横に振われた腕に逃げ場を失い、焦るが、その瞬間俺の中のスイッチが入りトロールの腕の動きを遅く感じ、状況の把握をする僅かな時間が出来た。
俺は横凪に振われた腕の下へと潜り込み、それと同時に迫り来る腕に下からバルザードと魔刀を交差して刃を立てる。
剣を持つ腕に凄まじい圧力がかかるが、両手に渾身の力を込めて耐える。
「グゥうう〜」
強烈な圧力は一瞬で無くなり、目の前にはゾンビの大きな腕が転がっていた。
ベルリアはジャンプして上手く避けたようだが、俺にはあの避け方は出来そうに無い。
『斬鉄撃』
あいりさんが正面から飛び込んでもう一方の腕に斬りかかり、無防備に振り切られた腕はあいりさんの薙刀により斬り落とされた。
両腕を奪ったので、戦いはもう終わりだが、ゾンビは腕を失ったにもかかわらず、一切声を上げる事はなく無く何事も無かった様に『アースウェイブ』から抜け出そうと足掻いている。
「ここまでやっても痛みを感じないのか。これはもう頭を落とすしか無いな」
その時、加速した超高速の弾丸がゾンビの頭部を捉えて風穴を開けた。
「ティターニア!」
「マスター……やりました」
「海斗! まだだ!」
「姫、お任せ下さい」
頭を『ドラグナー』に撃ち抜かれたゾンビは一瞬倒れかけたが、踏みとどまり『アースウェイブ』の影響から抜け出した。
ベルリアが地を蹴り、ゾンビの頭部の位置まで跳躍し
『アクセルブースト』
炎の残像を残してゾンビの首に向けて魔刀を振り切る。
「ドォ〜ン」
重量感のある音と共にゾンビの頭部が地面へと落ちたが、俺達は集中力を切らさず頭部を失ったゾンビを注視する。
まさか頭部を失っても大丈夫って事は無いよな。
ゾンビの耐久性に不安がよぎったが、一瞬の間を置いてゾンビがその場から消え去った。
「ベルリアやったな」
「はい、大きいだけの愚鈍な相手、このベルリアの敵ではありません」
「いや、お前一人で倒したわけじゃ無いからな。とどめをさす前に俺とあいりさんで殆ど攻撃力をゼロにしてただろ」
「マイロード、このベルリア調子に乗ってしまいました。お許し下さい」
「まあ別にいいけど。とどめをさしたのはベルリアで間違いないからな」
「はっ、ありがたきお言葉感謝いたします」
それにしても一体しかいなかったのにかなり苦戦したな。スケルトンナイトといい、この階層の敵はかなり難敵だ。
「さっきのってトロールがゾンビ化したのかな」
「そうね、そう見えたわね」
「トロールゾンビか」
「ネーミングセンスが……まあいいけど」
まだ探索し始めたばかりだが、十七階層のドラゴンとはまた違った難しさを感じる。
敵が消滅するまで気を抜かずにいこう。