A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (71)
第71話 魔氷剣
俺は今、一階層の端の方に来ている。
7階層をシルとルシェと一緒に回って、ゴーレムを何度か倒しているが、あくまでも俺の役目は誘導役に徹している。
徹していると言うよりそれしか出来ない。
魔核銃は威力が足りない。バルザードは射程が短い。『ウォーターボール』も効果が薄い。
割り切って、裏方に徹してはいるものの、どうにかして直接的に俺も活躍したい。そう考えていつもの訓練スペースへ来ている。
何をどうすればいいのか漠然とすら思いつかないが出来ることをいろいろやってみるしかない。
ギルドイベントで気がついたのだが、参加者の中でも俺はあんまり強い方ではなかった。技術があるわけでもなく、力が突出しているわけでもない。
シルとルシェと周る事によって飛躍的にレベルとステータスは向上したが、戦闘技術が向上したわけではなかった。同レベルまで達した探索者と比べて圧倒的にスライム以外のモンスターとの戦闘経験が不足しているのだと解った。
技術と経験はすぐには身につかない、であればどうにか頭と既存戦力を使って差を埋めるしかない。
まずは、メイン武器の魔核銃だが、強化できないだろうか?
とにかく連射してみるが、マガジンの関係で十発で一旦終了してしまう。同じところを何度も打てないかとやってみたが、止まっている的にすら同じところに当てるのは難しかった。まして、動く敵相手には至難の業で、俺には出来ない。
次に同じ玉なので、魔核銃の弾に『ウォーターボール』がのせられないかとやってみたが、撃つスピードと詠唱のスピードが違いすぎるのと、そもそもの飛行スピードが違うのでこれも失敗に終わった。
次に『ウォーターボール』の強化を考えた。
これについては以前も水の時にやったので、それを氷に置き換えてやるだけだ。
やはりスピードは変えることができる。
形もある程度変えることはできた。ただどんなにイメージしてみても本来の氷の強度以上に硬くすることはできないのと、今のアイスジャベリンを大きく超える成果を得る事は出来なかった。
最後に残されたのが魔剣バルザードだ。腐っても魔剣、この超近接武器でなんとかできないだろうか?
まず最初にやったのは投げナイフの要領で投げる事だ。
勿体無いので魔核を吸収させずに都合100回以上は投げてみたがうまくいかない。どうしてもうまく垂直に刺さらない。もしかしたら投げナイフ専用のナイフとかあるんだろうか。数回だけうまく刺さったものの動く相手に使えたものではない。
それでは、正面から体術で近づいて一撃で仕留める。考えるだけでもカッコいい。まさに忍者か暗殺者の御業だろう。
これについては、スライム相手や、イメージだけではどうにもならないので2階層に潜ってゴブリン相手に訓練を積んでみた。
結論から言うと、回数を重ねる事でゴブリン相手ならなんとか出来るところまでにはなった。しかし、ゴブリンとゴーレムでは射程が違う。おまけに一撃の威力が違うので万が一にも失敗できない。
失敗イコール即死となりかねない。
これもゴーレムには使えなかったが、ゴブリン相手に、この戦法でなんとかなっている自分の成長を感じられてちょっと嬉しかった。
そして最後に試したのが、魔剣の強化。簡単に言うと射程距離の延長を考えた。
魔核を3個以上吸収できないか、いろいろやったが無理だった。次に刺した瞬間のイメージで威力が変わるので、イメージでどうにかならないかやってみたがダメだった。
最後に考えたのは『ウォーターボール』を魔剣に重ねることができないかだ。
魔剣の魔は悪魔の魔かもしれないが、魔法の魔でもある。本質的に同系統のものなのであればなんとかならないのかと考えたのだ。
まずバルザードを構えて
「ウォーターボール」
うん。ふつうに飛んで行った。
「ウォーターボール」
今度は手元めがけて飛んできた。危ない。
うまくいかない。多分イメージの問題だな。
「ウォーターボール」
今度は剣の先から射出された。ちょっと違う。
剣の刃として定着するイメージ。バルザードを持っている持ち手から伝播するイメージを固めて
「ウォーターボール」
「おおっ」
今度は、イメージに近いものになった。氷の刃がバルザードの刃に重なり伸びた。先だけ伸びたので重くなりそうなものだが、そもそも魔法だし、もともと飛んでいくようなものなので不思議と重さは殆ど変わらなかった。
マジックアイテムによる拘束だが、発動の瞬間は拘束されるようだが、バルザードと一体化した瞬間に拘束が解けた。
ブンブン振ってみるが問題なく使えている。約20秒ぐらいすると、氷の刃は消失してしまった。
永遠に魔法を顕現させることはできないので、一発分で20秒がリミットのようだ
射程が伸びたところで氷の強度しかなければ意味がないと思いながらゴブリン相手に試し斬りしてみる。
「ズズッ」
バルザード単体で使った時と同じような感覚があり、破裂のイメージを重ねる
「ボフゥン!」
完全にバルザードだ。バルザードと同じだ。
おそらく発動時は普通の「ウォーターボール」だがバルザードと一体化した時点でバルザードの特性を持つのだろう。拘束が一瞬で解ける理由もそれが理由だろう。
その後も何体かで試してみたがイメージ通りの効果を得ることができた。
遂に魔法剣、いや魔氷剣とでも言うべき武器を手に入れてしまった。これでゴーレム相手でも戦えるのではないだろうか。
ただし、1回の使用で、バルザード分の魔核とウォーターボール分のMPの両方かかるので、すこぶる燃費が悪い。
明日からまた1階層でスライムの魔核を集めないといけないな。