A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (712)
第704話 ヴァンパイア
『グヘェッ』
鉄球をくらったヴァンパイアがアニメでしか聞いた事のない様な声をあげる。
やはりあいりさんの『アイアンボール』は対人型モンスターには絶大な威力を発揮する。
とにかく今がチャンスだ。
俺は再びヴァンパイアに向けて走り出し、距離を詰め、両手に持つ剣を十字に振るいヴァンパイアを斬り裂く。
「ガァアアア〜」
剣を十字に振るったのは、その方がなんとなくヴァンパイアには効きそうな気がしたからだが、効果があったのかはわからない。たたバルザードと雷の魔刀がヴァンパイアを斬り裂く事に成功した。
普通の人間なら致命傷だが、こいつは不死のヴァンパイアだ。これで気を抜くわけにはいかない。
俺は追撃をかける為にもう一度二刀を振るい首を刎ねようとするが、三度ヴァンパイアのスキルが発動し雷が炸裂した。咄嗟に回避したが、ヴァンパイアをも巻き込む形で発動した為、避けきれずにダメージを受けてしまった。
「グゥウウ……」
痛い。猛烈に痛い。回避行動を取ったので直撃したわけでは無いが左半身が猛烈に痛い。
まさかの自爆攻撃。
流石にこの至近距離での戦闘中に魔法を発動するとは思ってもみなかった。
装備のお陰で、ダメージのうちのかなりの部分を受け流す事が出来てはいるが、痛いものは痛い。
「ご主人様!」
「海斗!」
俺は痛みに耐えながら、一旦その場から離脱を図る。
『斬鉄撃』
俺と入れ替わる形であいりさんが前方に飛び込んで薙刀の一撃を放つ。
あいりさんの先には俺が戦っていたヴァンパイアがいて、俺がつけた傷は残っているものの、傷口から煙の様なものを発しながら回復しているのが見て取れた。
あいりさんの一撃も手負いで動きの鈍ったヴァンパイアを捉え、更に深手を負わせる事に成功するが、消失までは至らない。
「あいり、どけ!」
その時ルシェの怒声が後方から響いて来た。
「ご主人様を傷つけるとは許せません。塵となって消えてください『神の雷撃』」
「たかだかヴァンパイアの分際で調子に乗るな! さっさと燃えてなくなれ『破滅の獄炎』」
シルとルシェがほぼ同時にスキルを発動し目の前のヴァンパイアを雷撃と獄炎が襲いかかり、ヴァンパイアは瞬時に消え失せた。
あのブーメランパンツの奴はここから何度も再生して来たが、こいつはどうだ?
バルザードを構えてさっきまでヴァンパイアがいた場所に意識を集中させるが、よく見ると地面には魔核が落ちているのが見える。
どうやらヴァンパイアはシルとルシェの攻撃で本当に消し飛んでしまったらしい。
やはりあのブーメランパンツは上位種だった様で、さっき戦っていた相手はそこまでの再生能力は備えていなかったようだ。
それにしても、これほど直接的なダメージをくらったのは久しぶりだ。
少しは十八階層のモンスターに慣れて来たと思っていたが、まさか再生能力を見越しての自爆攻撃を仕掛けて来るとは思ってもみなかった。
噛まれる事を恐れて、一気に突っ込んだのは悪手だったかも知れないが、噛まれない為にもやむを得ない戦術だったと思う。
目の前のヴァンパイアが消滅して気が抜けそうになるが、奥で魔法が発動した音が聞こえて来た。