A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (718)
第710話 家内安全
「ここまでやらないと倒せないのか」
四肢を切り飛ばした上で頭部を潰してようやく倒す事が出来た。不滅というわけではないが、キョンシーのこの耐久性は厄介極まり無い。
どうやらキョンシーを倒したのは俺が一番早かったようでベルリアとあいりさんはまだ交戦中だった。
「あいりさん、フォローしましょうか?」
「いや大丈夫だ。色々試してわかってきたところだ」
一体何がわかってきたというのだろうか? あいりさんは相変わらずお札を左手に持ちながら戦っている。
俺の相手とは違いファイアキョンシー化してはいないので幾分は戦い易いとは思うが、キョンシーのトリッキーな動きに対して洗練された動きで対応している。
「海斗! 見ていろ!」
あいりさんは、俺に呼びかけると再び左手に持ったおふだをキョンシーの頭部へと押し当てた。
「どうだ? 効果てきめんだろう」
「そうですね」
信じられない事だが、やはり先程と同じく、頭におふだを押し当てられたキョンシーは完全に動きを止めている。
「映画だと、このまま手を離してもおふだが張り付いていたんだが、もしかしたら両面テープでも使っていたのかもしれない」
あぁ……それでさっき手を離したのか。先程のあいりさんの不自然な動きの理由がわかった。
「本来で有ればここから法術を使って倒すところだが、残念ながら『アイアンボール』で倒す事は出来なかったからな」
法術? 俺達の世界には法術なんか無かったはずだが、またあいりさんは映画の世界に入り込んでしまっているのか。
ただ痛みを感じない上にこの耐久性では『アイアンボール』は相性が悪い。
あいりさんは左手でおふだを押し当てたまま、右手で薙刀を短く持ち直し器用に振り切った。
『斬鉄撃』
器用に振り切った薙刀の一撃は見事にキョンシーの首を苅り取る事に成功し、キョンシーはその場から消え去った。
「やりましたね」
あの状態から薙刀を振るうとは、さすがあいりさんだな。
「ああ、次はおふだに両面テープを貼り付けておく事にするよ」
おふだってテープで貼りつけても効果を発揮するんだろうか?
おふだに意味があって貼り付ける方法は問題では無いのかもしれない。
「あいりさん、それよりそのお札すごいですね。本当にキョンシーの動きを封じてましたよ。よくそんな特別なおふだが家にありましたね」
「いや、このおふだはそれほど特別なものでは無いぞ。父が近くの神社で買って来た家内安全のおふだだからな」
「家内安全……」
てっきり対キョンシー用の特別なお札だと思っていたが、まさかの家内安全のおふだ。
もしかしておふだだったらなんでもいいのか?
ある意味、このおふだをぶっつけ本番で試してみたあいりさんも凄いが、その事以上に家内安全のおふだのオールマイティさに衝撃を受けてしまった。
家内安全だけでは無く対キョンシー用の武器として十二分に効果を発揮していた。
まさかとは思うが、他のアンデッド系のモンスターにも効果があったりするのだろうか?