A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (719)
第711話 おふだの種類
俺とあいりさんの戦闘が終わり、緊張感が解けてかなり気が抜けてしまったがベルリアはまだ戦っている。
俺とは違いベルリアは近接戦で圧倒的にキョンシーを上回っているが、ベルリアも俺と同じ状況に陥っていた。
恐怖のファイアキョンシー化!
ベルリアの炎の魔刀で斬りつけて引火したのだろう。
技術で圧倒し燃え盛るキョンシーを相手に戦っているが、ファイアキョンシーに対してベルリアの持つ武器が問題だった。
炎の魔刀はファイアキョンシーの炎を更に燃え上がらせ、風の魔刀も風を送り込み燃焼を助長している。
攻撃すればするほどにファイアキョンシーの炎の勢いが増し、今は炎でキョンシーの姿が倍化したかのような錯覚を覚える程に大きく見える。
「私にこのような対抗策を取って来るとは、死肉にしては頭が回るようですね」
ベルリア何を言っているんだ? キョンシーは単純に燃えやすいだけだぞ。
「そろそろ終わりにしましょう。燃え尽きてください『ブラックブレイド』」
ベルリアが超至近距離から黒い刃を飛ばしてキョンシーを切断する。
胴体が真っ二つとなっても、バタバタと動きを見せているが、ベルリアがジャンプして上空から刀を頭に突き立て消滅させる事に成功した。
「ベルリア、結構苦戦したな。武器の相性が良くなかったから仕方がないけど」
「マイロード、全く苦戦などしておりません。先程の戦いは全て想定内です」
「そうか、それならいいんだ」
どう見てもさっきのは苦戦していたのにベルリアの見栄っ張りにも困ったものだ。
「海斗もベルリアもよかったらこれを使ってみるか? 一応まだ枚数があるんだが」
そう言ってあいりさんは、俺とベルリアにおふだを一枚ずつ渡してくれた。
これがさっき使ってたおふだか。
本当にどこにでもあるような紙製のお札だ。
「安産祈願!?」
先程のあいりさんのおふだは家内安全と書かれていたが、俺の手元にあるおふだには安産祈願と書かれている。
キョンシーに安産祈願のお札が効くのか? 家内安全のおふだが効くんだから、おふだならなんでもいいのだろうか?
ベルリアの手にあるおふだを見るとそこには交通安全の文字が書かれていた。
「本来で有れば、このおふだを法術で飛ばしてキョンシーに貼り付けるんだが……そうだ、ドローンで運んで貼り付けるのもありかもしれないな」
「あいりさん……ドローンはやめておいた方がいいです」
「ああ、ドローンといえば……」
ドローンにはいい思い出がない。おそらくキョンシーに向けて飛ばしてもあっさり撃ち落とされて終わるのは、火を見るよりも明らかだ。
「もう、その件はいいんです。かなり前の事ですから。それよりもこの世界には法術なんか無いですから、ある前提の行動は謹んでくださいね」
「そうは言うが、スキルと魔法が存在するんだぞ。法術があってもなんの不思議もないだろう」
「まあ、それはそうですけどね」
「それと、次からは両面テープを持ってきておいた方がいい」
「家にあったと思うので俺が持ってきますよ」
「そうか、頼んだぞ。これでペタッと貼ればもっと簡単に倒す事ができるはずだからな」
やはりおふだに両面テープを使うつもりか。
まあ何事も挑戦してみる事は大事なので、次回以降おふだの効果も併せて試してみようと思う。