A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (722)
第714話 幽霊にはお経?
「海斗先輩〜聞きましたか? 探索者パーティが壊滅状態に追いやられる事件が多発してるの」
「ああ、隼人たちから聞いたけど野村さんも知ってるのか」
「はい、結構有名な話ですよ。私たちも大丈夫かな〜って話してるんです」
「野村さんは今三階層だろ? 被害は十階層より下って聞いてるけど」
「いえ、私は五階層付近でも被害が出てるって聞きましたよ」
「そうなのか?」
隼人から聞いた話と違うな。これって被害が拡大しているってことか? それとも敵が複数いるってことなのか?
「まあ、大丈夫だと思うけど気をつけてな。それより新しいパーティはどうなんだ?」
「はい、同世代の女の子ばかりなので楽しいですよ」
「それはよかった。無理せずに頑張ってな」
「はい」
久しぶりに野村さんと話したけど、上手くやれているようで良かったけど、俺も負けないように明日からまた十八階層で頑張ろう。
翌朝、準備を整えてからダンジョンへと向かい、メンバーと合流して早速十八階層へと向かう。
「そういえば海斗、探索者キラーのこと聞いた?」
「探索者キラー?」
「探索者を潰して回ってるらしいわよ」
「ああ、その話か。聞いてるよ。それにしても探索者キラーって……」
「だって既に何人か殺されてるそうよ」
「殺されてるって、そこまで聞いてなかったけど本当なのか?」
「そうみたい」
ダンジョンなのでもちろん不慮の事故で亡くなってしまう事はあるが、ダンジョンがある程度解明されてからは、ほとんどのパーティが安全マージンを取りながら探索しているので怪我をする事はよくあるが、亡くなるということはあまりない。
それが何人かの探索者が殺されたとは穏やかではない。
適正な階層で潜っている限りは、そういったことは起こりにくい。
もし本当に複数そういったことが起こっているとすれば、完全なイレギュラー。その階層以上の力を持った敵の襲来。
シルの言っていた妙な気配の敵による可能性がある。
「ご主人様、ご準備ください」
俺は気を取り直して敵に備え進んで行く。
「みんな……あのモンスター透けてないか?」
「ああ、そのようだな」
「幽霊みたいですね」
進んだ先には二体のアンデッド系と思しきモンスターがいたが、今までのモンスターと違い身体が透けている。外見はかなり腐食が進んでいるようだが髪と服装からおそらく女性だ。
「あれって倒せるのかな」
「ああ、幽霊ならお経で倒せる」
「あいりさん、それ本当ですか? お経で倒せるんですか?」
まさかのお経だが、先日のおふだの件があるので、あいりさんが倒せるというのなら倒せるのだろう。だが、俺はお経なんか読めない。
「ああ、冗談だ。お経でモンスターが倒せるはずがないだろう。海斗しっかりしてくれよ」
「あいりさん……」
「海斗さんも、あいりさんの冗談を本気にしちゃダメなのです」
え? 今のって俺が悪いのか? 先週の事があって、こんな真顔で言われたら誰だって信じるだろう。
「じゃあどうやって倒せばいいんですか?」
「それは聖水だ! 聖水代わりに塩水を持ってきているから、祈りながらふりかけよう」
これは……どっちだ? 冗談なのか? それとも本気か?
「あいりさん冗談はやめましょうよ。もうひっかかりませんよ。いくらなんでも塩水じゃあ無理でしょう」
「海斗、何を言っているんだ。冗談でこんなことを言うはずがないだろう。しっかりしてくれ」
……今度は本気だったのか。