A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (723)
第715話 聖水は精製水
「あいりさん、モンスターに聖水を試したことはないですよね」
「当たり前だ。初めて会う敵に試せるはずがないだろう」
「あいりさん、そもそも持ってるのは、本物の聖水ではないんですよね」
「そうだな。さすがに本物は手に入らないから疑似聖水とでもいうものだな」
「どうやって作ったんですか?」
「それは精製水に十パーセントの天然塩加えて念を込めながら混ぜたんだ」
……精製水
まさか精製水だけに略して精水なんてことは無いよな。それに念を込めて塩を混ぜると精製水が聖水にって、俺でも作れるけど本当にそんなもの効くのか?
「海斗信じていない顔だな。まあ見ていろ」
そう言ってあいりさんは疑似聖水を手に幽霊のもとへと向かって行く。
「あいりさん! 危ないですって」
あいりさんの疑似聖水は霧吹きのようなものに入っているが、どう考えても射程は一メートル程度しかなさそうだ。
「ミク、あれ大丈夫なのか?」
「まあ、あいりさんだし大丈夫じゃない? それにしてもあれってスペクターかしら」
「ゴーストじゃないのですか? ゴーストとスペクターってどう違うんでしょうか?」
「まあ、ちょっと透けてるし幽霊なのは間違いないな。それより二体いるからもう一体は俺たちでなんとかしようか。聖水以外って何が効くんだろう。物理攻撃って効果あると思う?」
「無理じゃない? 魔法攻撃なら効果ありそうな気がするけど」
「そうだな。それじゃあヒカリン『アイスサークル』で固めてしまうのはどうかな」
「良さそうですね。さっそくやってみるのです『アイスサークル』」
氷の円柱がスペクターを包み込むように発現して一瞬にしてスペクターの氷漬けが出来上がった。
「海斗、あいりさんが!」
慌ててあいりさんに目線をやると、まさにスペクターに聖水を吹きかける瞬間だった。
あいりさんが霧吹きを構えて吹きかけると前方に向けて霧状の疑似聖水が広がった。
「ぎいいイイアアアアア〜」
スペクターが断末魔をあげている。
これは効いているのか? いや間違いなく効いている。明らかにスペクターがダメージを受けて、その場から逃げようとしている。
「逃がすか! 聖水で祓われるがいい」
あいりさんが逃げようとするスペクターを追い、更に霧吹きで疑似聖水を吹きかけるとスペクターはその場から消えていなくなってしまった。
この場合昇天したという言い方が正しいのか?
「あいりさん本当に効果がありましたね」
「当たり前だ。私お手製の聖水だからな」
これってあいりさんが作ったから効果があるのか? それとも俺が適当に作っても効果があるんだろうか。この場では検証のしようがないので、今日帰ったら家で作ってみよう。家に精製水なんかないから、とりあえず水道水に塩分濃度十パーセントで作ってみよう。
あいりさんが念を込めたと言っていたが、念の概念がよくわからないので適当に手を合わせておけばいいかな。
それにしてもあいりさんの疑似聖水はスペクターに対して劇的効果だった。