A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (724)
第716話 黒い敵
「それはそうと、もう一体のあれどうしよう」
スペクターをヒカリンの『アイスサークル』で氷漬けにしたものの、このまま放っておくわけにもいかない。
「このまま砕けばいなくなるんじゃない?」
「この氷を砕くのか。結構難易度高いな」
このサイズの氷を斬ることは出来ても砕くとなると難しい。
「シル頼んでいいか?」
「はい、おまかせくださいご主人様。氷ごとモンスターも砕きます『神の雷撃』」
シルの放った雷撃が氷へと落ち、砕くと同時に蒸発させてしまった。
どうやら問題なくスペクターも一緒に蒸発してしまったようだ。
「シル、さすがだな」
「ありがとうございます。御用の時はいつでも言ってくださいね」
シルの一撃に頼ってしまったので、氷ごと砕けばスペクターを倒せるのかどうかの検証はできなかった。
氷漬けで無くともシルの雷撃をくらえば蒸散してしまう気がする。
「海斗、ほらほら」
「わかってるよ」
エコ贔屓はいけない。差別もいけない。軋轢を生まない為に平等ルールを設けてはいるが、今回戦ったのはシルだけ。心情的にも懐的にもルシェには渡したくないがしかたがない。
ベルリアを除く三人にスライムの魔核を渡して先に進む。
「ミク、あいりさんなんか凄いな。おふだといい聖水といい俺には思いもつかないことをやって結果を出してる」
「私もあいりさんを見習っておふだは一枚持ってきたわ」
そう言ってミクが一枚のおふだを見せてくれたが、そこに書かれていた文字は『商売繁盛』だった。
「ミク、それって本当に効果あるのか?」
「多分大丈夫じゃない? パパの念が目いっぱいこもってると思うわ」
おふだってパパの念でもいいのか?
「あの聖水の霧吹きもいいのです。わたしは前に出ることはありませんが、万一の時に霧吹きがあれば身を守れるのです」
「スペクターには効果があったけど、他のモンスターに効くかはわからないから、万一の時は霧吹きよりは魔核銃とかの方がいいと思うけど」
まあ、おふだについては、前回あいりさんからもらった安産祈願のがあるから機会があれば試してみようと思う。
せっかく試してみようと思ったが、進んで行くとスケルトンナイト等のモンスターと何度か戦闘にはなったが、キョンシーはまだ出現していない。
そう都合良くはいかない。ダンジョンではよくあることだ。
「ご主人様、モンスターだと思います。ご準備ください」
「シル、モンスターだと思うってどういう意味?」
「敵なのは間違いありませんが、通常のモンスターとは少し感じが違う気がします」
シルがこんな事を言うのは珍しいので、どう違うのかはわからないが警戒が必要かもしれない。
「みんな、慎重にいこう。ベルリアを先頭に俺とあいりさんがその後ろでいきましょう」
ベルリアならどんな相手でも咄嗟に反応ができるので、ベルリアに先陣をまかせて、俺とあいりさんがそれに続く。
「マイロード、敵を発見しました。あれは……」
距離があるので俺にはまだ小さな黒い塊にしか見えないが、ベルリアは敵を認識したようだ。