A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (725)
第717話 知り合い?
慎重に近づいていくと次第に敵の姿がはっきりと見えてきた。
「海斗、もしかしてあれはお前の知り合いか?」
「あいりさん、たしかに俺も黒いですけど笑えない冗談ですね」
見えた敵は真っ黒。
人の形をした真っ黒な敵。
もちろん俺の知り合いではないし人間でもない。
形は人型だが顔もよくわからない。完全なる黒。よく見ると身体全体が微妙に波打っている。
「マイロード、おまかせください。あのようにマイロードを模したような黒いだけのモンスターなど、このベルリアの敵ではありません」
ベルリアお前もか。別にあれは俺を模したのでは無いと思う。
ベルリアが魔刀を構えて黒い敵を目掛けて斬り込んでいくが、ベルリアの振るった刀は確かに敵を捉えたように見えたが、ダメージを与えることはできずに、敵の身体をすり抜けた。
「小細工を! これで終わりです『アクセルブースト』」
ベルリアがスキルを発動して、先程よりも鋭い加速した刀を叩き込むが、今度も同じだ。
確かに身体を捉えたにもかかわらず刀がすり抜けた。
「ベルリアさがれ!」
身体が波打って見えたのは、身体が普通の肉体ではないから。液体なのか気体なのかよくわからないがどう見ても固体では無い。
「援護するのです『ファイアボルト』」
ヒカリンの放った炎雷が黒い敵を穿ち、その胴体に大きな穴を開けるが一瞬で元の姿を取り戻し動き始める。
「なっ……」
確かにヒカリンの放った炎雷は敵を捉え、穿った。
それなのにノーダメージ。
ベルリアの魔刀による物理ダメージもヒカリンの魔法攻撃も効果無しだ。
「まだよ!」
今度はミクがスピットファイアで炎弾を放つが、先程のヒカリン同様、黒い身体をすり抜けた。
黒い敵は、攻撃を意に介さずこちらへと向かってくるが、黒い敵の手からは炎が噴き出している。
敵の攻撃手段は炎か!
「まかせろ!」
あいりさんが霧吹きとおふだを手に俺たちの前に出た。
「あいりさん!」
あいりさんが、黒い敵へと向かい手前で霧吹きで擬似聖水を吹きかけた。
「まだ足りないかっ!」
あいりさんが連続で霧吹きを射出する。
霧吹きから放たれた擬似聖水を全身に浴びた黒い敵は明らかに動きが鈍くなってきている。
効いてるよな……
あいりさんの攻撃が効果を発揮しているのは明らかだ。
動きが鈍くなった敵に向けて、今度は例のおふだを貼り付けると黒い敵は完全にその動きを止めた。
「家内安全……」
すごいな。もう認めるしか無い。あいりさんの持っている家内安全のおふだは、この階層の敵に必殺とも言える効果を発揮している。
そしてただの塩水、いや聖水も確実に効果を発揮している。
あれが魔法より効果が高いとは、目の前の光景を見ても信じがたいが、これが真実。
真実は小説より奇なりという言葉があるが、まさにこの光景はそれだろう。
「ご主人様、おふだや聖水が効果を発揮したという事は、あの黒い敵は、悪霊の類。おそらく炎を発しているところを見てもあれはマサンだと思います」