A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (726)
第718話 マサン
「マサン? 聞いた事ないな」
「死を司る悪霊です」
どうやらシルによるとあの黒いのは悪霊らしいが、変わった風貌の悪霊もいるものだな。
「海斗のお友達じゃなかったのね」
「ミク、それはもういいから。それよりもあの状態からどうやって倒せばいいんだ?」
おふだも聖水もマサンの動きを止めるには効果を発揮しているがあの状態から、とどめをさせる感じでもない。
「試しにスピットファイアで撃ってみましょうか?」
「そうだな。一発だけ撃ってみる?」
「わかったわ」
いきなり何発も撃ってなにか起こっても困るので、とりあえず一発だけ撃ってもらう。
ミクの放った炎弾が動きを止めたマサンの胸部に大きな穴を開ける。
「やったか?」
おふだと聖水の効果で胸に穴が開いても全く動く気配は無いが、ゆっくりと穴が閉じているのがわかる。
回復速度は明らかに落ちているが、やはり炎弾でしとめることは難しいようだ。
「海斗さん『アイスサークル』で固めますか?」
「う〜ん、それもな〜」
確か『アイスサークル』なら固めて倒せる気がするけど、砕くのが大変なんだよな。
こういう時に他のパーティなら爆弾とかで一気に吹き飛ばすのかもしれない。
「シル、雷撃で倒せるか?」
「はい、もちろんです」
「おい、ちょっと待て。なんでわたしじゃないんだ?」
「だってルシェは炎だろ? また燃え尽きるのに時間がかかりそうだからシルに頼むよ」
「バカにしてるのか? あんな黒炭野郎一発だぞ!」
「シル頼んだ」
「おい!」
なんにでも相性というものがあるので、ルシェのことはスルーする。
「それではいきます。あいりも離れていてください」
「はい、シル様」
あいりさんがその場から離れるが、おふだはしっかりとマサンの頭部に張り付いている。
俺の持って来た両面テープがその性能を遺憾なく発揮している。
たとえ両面テープで貼り付けても、おふだの効果が損なわれることはなかったようだ。
『神の雷撃』
シルの放った雷撃がマサンを焦がす。
一瞬で敵の身体を消し去り、既にマサンの姿は無いが、再生しないとも限らないので注目するが、よくみると地面には魔核が落ちているので問題なく倒す事に成功したようだ。
「ご主人様、あいり……申し訳ありません」
なんだ? どうして敵を倒したシルが謝っているんだ。
「シル様、謝る必要など全くありません。おふだなど所詮は紙。代わりはいくらでもありますから問題ありません」
あぁ、そういうことか。
シルの雷撃はマサンと一緒に家内安全のおふだを焼き尽くしてしまっていた。
あの万能おふだが無くなるのは少し痛いが敵を倒すためだったので今回は仕方がない。
「あいりさん、俺が弁償します」
「いや、大丈夫だ。今日は他にも持って来ているからな」
そう言ってあいりさんはマジックポーチから新たなおふだを取り出した。
「除災招福ですか」
「ああ、家にあった中で一番効果がありそうだったから持ってきたんだ」
確かに、家内安全や安産祈願に比べると格段に悪霊に効果がありそうなおふだだ。
それにしてもあいりさんの家には一体何種類のおふだがあるんだろう。
昨日母親に聞いてみたけど残念ながら我が家にはおふだらしきものは一枚もなかった。