A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (735)
第727話 聖水の作り方
探索を終えて家に帰る前に百円ショップに寄って霧吹きを買っておいた。
対アンデッド用の準備のために疑似聖水を作るつもりだ。
あいりさんによると聖水の作り方は精製水に塩十パーセントと念だそうだ。
残念ながら我が家には精製水なんてものはなかったが、ただの水道水で大丈夫なのか心配になったので一応二種類作ることにした。
水道水と、一度沸かせたお湯で疑似聖水を作ることにした。
とりあえず水二百ミリリットルに対して塩二十グラム。
塩は一応キッチンにあった海外製の天然塩だ。海外製なのは少し気になったが天然塩なので普通の塩にくらべると効果は高い気がする。
水とお湯でそれぞれ作るが、塩を溶かすだけなのであっさりと完成する。このままではただの塩水なのでここから念を込める。
ただこの念を込めるという作業に思いの他手こずってしまった。
そもそも塩水に念を込めるってどうやるのが正解なんだ?
とりあえず出来た塩水を手に取ってから
「う〜っ」
手に持った器の中の塩水に目を瞑って集中する。
こういうのはイメージも大事だな。
イメージするのは清らかな感じ。漠然としているので澄んだ湖のイメージを重ねる。
「海斗、あんた大丈夫? お水持って、うんうん唸って何やってるのよ」
「大丈夫だって。聖水作りの最中だから邪魔しないでよ」
「聖水って、あんた最近頑張りすぎてるんじゃない? 大丈夫なの? 明日は休んだらどう?」
「休まないって。ちょっと集中できないからあっちに行っておいてよ」
「はい、はい。おかしな方にいかないでね」
母親が妙に俺のことを気遣ってくれるが、聖水作りをキッチンでやっていたのが良くなかった。
せっかく集中したのに母親に集中を乱されてしまった。
再び集中して念を込める。
念を込めるというより集中して瞑想する感じかもしれないが、これでいいのか?
こんなので本当に聖水になったのか?
一応効果測定をしたいので水道水をA 沸かしたお湯の方をBのラベリングをしておいた。
「よし! これで準備万端だな」
こうして俺の対アンデッド用の武器が完成したが、効果は既にあいりさんが証明済みなので、俺も魔刀を聖水Aの入った霧吹きに持ち変えて探索を続ける。
アンデッド系モンスターが出現すれば速攻で吹きかけるつもりだ。殺虫剤スプレーを日常的に使用している俺には吹きかける系のこの霧吹きは相性がいいはずだ。
「ご主人様、モンスター二体です。ご準備ください」
進んで行くと、そこにはスペクターらしきモンスターがいた。
あのモンスターならうってつけだ。
聖水が効くのはあいりさんが先日の戦いで実証してくれている。
あいりさんも俺と同じく聖水を片手に構えている。
「いきますよ!」
「ああ」
俺とあいりさんが先陣をきる。
スペクターに向かって走るが、霧吹きを持つ手に力が入る。
すぐにスペクターとの距離は詰まり霧吹きの射程まで到達する。
確か祈りながら霧吹きで吹きかければいいんだったな。
俺は祈りを込めながら霧吹きのハンドルを引く。
「頼むぞ! 効いてくれ〜!」