A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (740)
第732話 死神の鎌
いずれにしても、バンシーと一緒にこの三体のスケルトンも倒す必要がある。
ただバンシーの姿が見えない状態では、不用意に飛び出すわけにはいかない。
「ルシェ頼んでいいか?」
「当たり前だろ。骨なんか一瞬で焼き尽くしてやる。『破滅の獄炎』」
大鎌を持ったスケルトンに向かって獄炎が放たれた。
獄炎がスケルトンを襲うが、スケルトン三体が同時に獄炎に向かって大鎌を振るうと、信じられないことに獄炎が真っ二つに斬れた。
「なっ……」
「ルシェ!」
「ふざけるな! 骨風情がわたしの獄炎を!」
ただのスケルトンじゃない。
あの鎌といい本当に死神なのか?
どうする、うって出るか?
「ベルリア!」
「マイロード、おまかせください」
「ちょっと待て!」
「はっ、姫いかがいたしましたか?」
「あれはわたしがやるって言っただろ。手を出すな!」
「はっ、失礼いたしました」
ベルリア……
俺の命令はどうなった。
「だけど、ルシェどうするつもりなんだ」
「どうするつもり? こうするつもりだ! 『炎撃の流星雨』」
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ』
ルシェがまさかの流星雨を発動し、地鳴りのような振動音とともに頭上から火球の塊が一気に降り注いだ。
大型の火球が次々にスケルトンを襲う。
スケルトンも数度鎌を振るい火球を切断したが、すぐに次の火球が押し寄せ一瞬にしてスケルトンを鎌ごと押しつぶす。
潰れた跡を次々に火球が襲い、灰すら残る様子はない。
そして目に見えるのは三体のスケルトンが跡形もなく燃やし潰される姿だが、当然後方に控えていたはずのバンシーも同じ運命を辿っているはずだ。
ただ透明化していたせいで潰れる様は見ることが出来なかったが、いたであろう場所の周辺が火球で埋め尽くされた段階でそれ以外の未来はありえないことはわかった。
「ふん、たかだか骨の分際で調子に乗るからだ!」
「ルシェ……」
「なんだよ全部片付けたんだからいいだろ」
「それはそうだけど」
やはりルシェの流星雨は尋常ではない。範囲攻撃な上にほぼエンドレスとも言える火球の雨。逃げようがない。
「海斗〜それより早くくれよ〜。いつもより腹が減ってるんだって」
それはそうだろう。何しろ一発でMP50を消耗する大技だ。
だがそれに見合う魔核と同数をみんなに配るわけにはいかない。
「今回は特別だからな。特別! そもそも勝手に『炎撃の流星雨』は使うの禁止だ。次勝手に使ったら魔核は無しだからな」
「わかったよ。だからさっさとくれよ」
ダメだ。この顔は全くわかってない時の顔だ。
それにしてもバンシーはかなりの強敵だった。ルシェの流星雨であっさりと片付けることができたとはいえ、透明化に大鎌のスケルトンの召喚。大鎌のスケルトンもルシェの極炎を斬るほどの強さだった。
さすが死を呼ぶ精霊と言われるだけはあった。