A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (744)
第736話 第二志望
「春香は最近写真とか撮ってるの?」
「うん、春は好きな季節だから。私の名前にも入ってるし、全部が明るくなる季節だから写真を撮っていても楽しくなるんだよ」
「確かにそうかも。俺は毎日ダンジョンに潜ってると季節感が微妙に感じにくいから気をつけないとな〜」
「放課後はそうかもしれないけど、毎日学校に来てるんだからそれは大丈夫だよ」
「いや、学校も体育の時間以外は教室の中だし、ダンジョンに季節感はないから。それに基本薄暗いところも多いし、外に出る頃には日が落ちてるから思った以上に季節に疎くなってる。たまには外で散歩しようかな」
「よかったら私も付き合うよ? ダンジョンは無理だけど外の散歩だったら大丈夫だから」
「是非お願いします」
春香と今の季節に散歩とか最高だな。
やっぱり地上でしかできないこともあるから、ダンジョン偏重気味の生活を見直した方がいいのかもしれないが、数日潜らないと落ち着かないし、魔核も足りなくなるから難しいところだ。
「海斗は今度の公開模試受けるでしょ?」
「模試……あぁ模試ね、模試。受けるよ。もちろん受ける」
「海斗は第一志望が王華で第二志望とか滑り止めってどこを受けるの?」
「第二志望?」
俺は春香と王華に行くことしか考えていなかったので、第二志望なんか考えていない。
「うん、私は帝山を受けようと思ってるの」
「春香って王華以外も受けるんだ」
「それはもちろん王華が受かれば一番だけど、もしも落ちたらって思って帝山も受けるつもり」
「そうなんだ。春香なら絶対大丈夫だと思うけど、じゃあ俺も帝山も受けてみようかな」
「うん、じゃあお揃いだね。まずは今度の模試でB判定以上が目標だね」
「B判定以上……もちろんだよ。春香ならA判定間違いなしだよ」
元々、探索者メインで考えていたので大学はどこでも良かった。だからそれほどリサーチしたこともなかった。受験生としては舐めていると言えなくもないが、今更、大学卒業時に探索者を止めてサラリーマンになるというイメージは全く湧かないので、一般的な受験生とは感覚が違うかもしれない。
春香ととにかく同じ学校に行きたい! その一心で王華を目指す決意をしたので、落ちるという結果は自分の中ではあり得なかった。
だけど、春香が帝山に行く可能性があるのなら俺も帝山に受からなければならない。
そして、公開模試でのB判定以上か……
残念ながら俺の今の成績でB判定以上は難しいかもしれないが、受験までには必ずレベルアップしてみせる。
「明日からの三日間で、模試でも良い点が取れるように頑張ろうね!」
「もちろんだよ」
春香の笑顔が眩しい。春の光にも勝る明るさだ。
いや、これはやっぱり今度の模試で成果を見せないといけない。
俺の勉強を春香が一緒に見てくれるのに、受験までにとか言ってる場合じゃない。
今こそ、俺の力をみせる時だ。
明日からの勉強会が楽しみだが、模試っていつだったっけ。