A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (746)
第738話 久しぶりの勉強会
放課後になったので、春香と一緒に家へと向かう。
「海斗は文系三教科で受験するんだよね」
「うん、そのつもり」
学内の成績をキープするためにしっかり授業は聞いているが、三年生になって理系の教科はかなり厳しくなってきているので、受験は文系教科に全てを賭けようと思っている。
「文系教科で苦手な教科とかはあるの?」
「そうだな〜三教科の中だと英語かな。国語は、昔からそこそこいけてたし、社会は暗記すればなんとかなるから英語だと思う」
「それじゃあ、今日からの三日間は英語を集中して勉強しようか」
「それは助かる」
受験に必要なのはわかっているが、俺の日常で学校の授業以外に英語と触れ合う環境は全くと言っていいほどにない。
ダンジョンで英語圏の探索者に会ったこともないし、将来的にも会わない気がする。
グローバル化の波がダンジョンに押し寄せないとも限らないが、国外にもダンジョンはあるのでわざわざ日本のダンジョンに外国の探索者がくるとも思えない。
将来役に立つ機会はほとんどないと思うが今は必須だ。
春香と話しながら歩いていると家に着いた。
「ただいま」
「おかえり〜春香ちゃん」
「おじゃまします」
なぜか母親は、ただいまを言った俺はスルーして春香の出迎えをする。
「もっと来てくれていいのよ。いつでも歓迎だから〜。春香ちゃんのママとも話はできてるから」
「はい、ありがとうございます」
母親が変なことを言ったのが確かに聞こえた。春香のママと話ができてるってなんの話だ? 俺は一切聞いてないぞ?
疑問に思いながらも、この場に長居するのは良くないと思いすぐに自分の部屋へと向かう。
「それじゃあ、勉強を始めようか」
「うん、まずはこれからね」
そう言って春香が英語の教科書と問題集を取り出した。
「俺その問題集持ってないんだけど」
「この問題集すごくいいから一緒に見ながら解いていこうよ」
ひとつの問題集を春香と一緒に解いていくってもうなにも言うことはない。勉強会最高だ。
早速、春香と並んで問題集を解いていく。
前回の勉強会同様かなりの至近距離だ。
しかも真ん中に置いてある問題集に寄る形になるので、右手を動かすと時々肩が触れる。
問題に集中する気はあるが、それ以上に右の肩に意識が集中してしまう。
「あ……ごめん」
「え? なにが?」
「い、いや、いいんだ。なんでもない邪魔してごめん」
また肩が春香の左肩に触れてしまった。
それにしても、こうして横に並ぶと春香の髪からふわっといい匂いがしてくる。
学校の帰りなのに何故か風呂上がりのようないい香りがする。
春香の匂いがするってことは俺の匂いも春香に届いてるってことだよな。
俺臭くないかな。やばいかもしれないが、さすがに「臭くない?」とは聞くに聞けない。
それにしても、なんで俺と春香の匂いがこんなに違うんだろうか? 俺からはこんないい匂いがしたことはない気がする。
使っているシャンプーが違うからか?
いやでも、俺が同じシャンプーを使ったらこんなに爽やかないい匂いがするんだろうか?
しない気がする。