A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (767)
第759話 必殺
『ドゥン』
俺の背後からドラグナーの発砲音が聞こえてくると同時に隼人の槍でダメージを受けたオオカミの眉間に穴が空いた。
「マスター回復させます。『キュアリアル』」
ティターニアが『キュアリアル』の魔法を発動してくれる。
続け様にもう一発発砲音が聞こえて、今度はもう一体のオオカミを覆っている光の一部が弾け、オオカミは俺に向かってくるのを躊躇してとどまった。
その間に眉間に穴が空いたオオカミは消失した。
ティターニアの稼いでくれた時間と『キュアリアル』のおかげでなんとか身体は動くようになってきたので、急いでその場から離脱する。
「俺の出番だな! だけど海斗、長くは持たないからさっさとかわってくれよ! 『必中投撃』」
隼人が動きの止まったオオカミに向けて小さな鉄球を連続で放つが光のバリアに阻まれてダメージがはいったようには見えない。
「くっそ〜やっぱりダメか〜。どう考えても俺の適正レベル超えてるぞ! くそ〜海斗まだか〜。くらえ俺の必殺!『必中投撃』」
隼人が叫びながら玉のようなものを投げつけると、光のバリアに当たった瞬間、オオカミの周りを煙のようなものが覆った。
「海斗、煙幕玉だ。今のうちに体勢を立て直せ」
「ああ」
煙玉では殺すことができないので必殺ではないと思うが、隼人の稼いでくれた時間がありがたい。
深く息を吸い込み乱れた呼吸を無理やり戻す。
酸素を取り込んだ身体が徐々に元の感覚を取り戻していく。『キュアリアル』の効果なのか若干ではあるが身体が軽くなってきたような気がする。
俺はナイトブリンガーの効果を発動し気配を薄め、アサシンの能力を発揮し音を殺して煙幕の後方へと回り込む。
煙幕の張られているこの状況なら今の俺を認識することは難しいはずだ。
両手の武器を握り直してそのまま煙幕の中へと侵入する。
煙幕の中に入ると途端に視界が暗くなるが、中心のあたりが発光しているのはわかる。
俺たちの攻撃を阻害していたオオカミを覆っている光が、煙幕の中で目印となってくれている。
俺は気配を薄めたまま光に向かって進み、背後からバルザードの刃を突き入れた。
光を透過する時強い抵抗を感じたが、力を込め身体で押し込む。
『ボフゥン』
破裂のイメージを刃にのせて角ありのオオカミを消滅させることに成功した。
戦闘の終わりと同時に『キュアリアル』の効果が切れたようで、身体が軽くなるような感覚も消失したが、そこまでのダメージがあったわけではないので、ほぼダメージを受ける前の状態に戻っている。
徐々に煙幕が晴れ、隼人たちにも状況が把握できるようになった。
「おおっ、海斗やったな。今の感じ完全に暗殺者だな」
「まあ一応アサシンだからな。隼人助かったよ」
「ああ、この煙幕も役に立ったな。俺のスキルと相性いいだろ?」
「間違いないな。ティターニアもありがとうな」
「はい」
隼人は、自分の能力の使い方が本当に上手くなっている。
今は前衛にでてもらっているがおそらく隼人が最も力を発揮するのは中衛。
隼人もそれをわかった戦い方をしている。
それにティターニアが思いの外いいタイミングで戦ってくれている。
今まで他のサーバントに隠れてあまり効果的な働きはみせていなかったが、やはり戦闘能力は高い。