A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (771)
第763話 ボス部屋の中へ
「それじゃあいくぞ?」
「ああ」
「はい」
俺と隼人がボス部屋の扉に手をかける。
黒い大きな二枚扉だ。
いつものように開け方に工夫が必要かもしれないと思いながら力を込めて押し込むと、扉が徐々に動き始め人が一人通れるほどのスペースがあいた。
「開いたな。ちょっと覗いてみるか」
中には踏み込まずに扉の外側から中のフロアを覗き込む。
「マジか……」
扉の中を覗くとすぐにそこが普通ではないことがわかった。
地面一面に大小の蛇が蠢いている。
階層主を確認することはできないが、足下の蛇が毒持ちだとすれば排除しなければ戦うことすらままならない。
「隼人、蛇って大丈夫か?」
「いや、大丈夫な奴っているのか?」
「そうだけど、戦ったりはできるよな」
「もちろん戦えるけど階層主ってヘビ型なのか?」
「いや、階層主はわからないけど床一面に蛇がいる」
「マジか。俺はなんとかいけるけど女の子たちは……」
「マスター、私もヘビは……あんまり」
ティターニアもか。この感じなら虫型のようなことはなさそうだが、百パーセントの力を発揮できるかは微妙だ。
「みんな聞いてくれ。この中の床には蛇が蠢いてる。モンスターではなさそうだから自分たちで倒して場所を確保してほしい。あとは自分の身を守ることに専念して」
「…………」
野村さんたちから返事がない。
まあ、予想はできたけど、女の子たちは蛇が苦手らしい。
俺は蛇退治のための秘策をマジック腹巻きから取り出してみんなに配る。
「海斗先輩これは?」
「見ての通り殺虫剤とライターだ」
「それはわかるんですけど、これでどうしろと……」
「まあ見ててよ」
俺が殺虫剤の射出口の前にライターの火をつけてかざし、トリガーを引くと引火して炎が吹き付けられた。
「おおっ! 海斗すごいな。火炎放射か。確かにこれならヘビを焼き払うこともできそうだ」
「殺虫剤にこんな使い方があったなんて」
確かにこんな使い方をするものではないし、製造元に知られたら怒られるかもしれないがスライム狩りで身についた知恵だ。通常の生き物であれば間違いなく効果はある。
「念のためにもう一本ずつ渡しておくから」
「海斗、一体殺虫剤を何本持ってるんだよ」
「だいたい二十本くらいだな」
「そうか。海斗すげ〜な」
準備は整った。
殺虫剤とライターを手にまず俺と隼人が扉の隙間から中に入る。
入った瞬間ジトっとした湿気を感じるが、気にしている余裕は無いので、地面に向けてすぐに殺虫剤で火炎放射する。
あたりに肉の焼け焦げた匂いが充満するが、そのまま中へと進む。
俺たちが中に入ったのを確認して、ティターニアと野村さんたちが続く。
「うぅ……ほんとにヘビだらけ」
「やるしかないのよ! ほら火を向けたら逃げていってるわ」
「やっぱりヘビも火には弱いんだ。それにしても殺虫剤をこれだけ常備してる『黒い彗星』って何者なの!?」