A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (775)
第767話 ラミア戦
回復するまで下がるか。
それともこのままラミアに迫るか判断がつかない。
さっきの攻撃は薄暗さも手伝って見えなかったが、ナイトブリンガー越しでこの威力なのでラミアが強いのは間違いない。
ティターニアの『キュアリアル』は回復まで時間がかかるが、この場でポーションを飲むには状況がまだ悪すぎる。
俺はバルザードの斬撃をラミアの方へと放ち、そのまま後方へと飛び退く。
「ぐっ……」
脇腹に痛みが走る。
「マスター、援護します」
すぐ後ろからティターニアの声とドラグナーを放つ音が聞こえてきた。
「痛いわね。この小娘が!」
地面を擦るような音と共にラミアがこちらに近づいてくるのがわかる。
二刀を構えて待ち構えるが、距離が詰まりラミアの姿がはっきりと見えるようになってきた。
ラミアの顔は人間そのもの。西洋風の美人だ。だがその目は爬虫類のそれで、ティターニアの攻撃に怒ったのか、憤怒の形相を浮かべている。
「あんたも邪魔!」
今度は俺に対して威圧してきた。
ラミアに気圧されそうになるが、必死に前方の敵へと意識を集中する。
無駄と思いながらもナイトブリンガーの能力を発動させ、気配を薄める。
攻撃が来る!
ラミアの身体が動いた瞬間に俺の右横からラミアの尻尾が迫ってきた。
一度くらったので予測はできたが、俺の反応速度を超えている。
スイッチが入りアサシンの能力が発動し、迫るスピードが少し遅くなり、俺は必死でラミアの尻尾に意識を集中させながらその場にかがみこむ。
幸い、俺の動きは加速して、どうにか避ける事ができたが、すぐに返しの一発が向かってくるのが見えたので、その場から後方へと転がるようにして回避する。
アサシンの能力と『ウィンガル』による底上げがなければ、まず対応できないほどのスピードだ。
以前ボス戦でアサシンの能力を連発してから徐々にではあるがアサシンの能力もコントロールできるようになってきているので、このタイミングでうまく使えた。
「くそ〜! 俺のファーストおっぱいはモンスターか! おおおお〜『必中投撃』」
俺の回避直後に隼人が叫びながらナイフを二本放った。
隼人の魂の一撃は狙い通りラミアの胸へと吸い込まれた。
「痛いじゃない! お前みたいな奴が! 殺す!」
「ひいぃ」
ラミアの胸に刺さったナイフは確かにダメージを与えたように見えるが、ラミアは健在だ。
健在というより、怒りの表情が更に進化して怪物じみてきている。
隼人はラミアのあまりの表情と威圧感に変な声をあげた。
だが、隼人の作ってくれたチャンスだ。身体はまだ痛いがラミアの方に向かって踏み出し加速する。
魔刀を振るい胴体へと斬り込むが、ラミアが腕を振るって魔刀を弾く。
俺の左腕には強烈な衝撃がはしり、危うく魔刀を落としそうになるがなんとか耐え、右手で持つバルザードでラミアの腕に斬りかかるが、狙いがバレていたのかあっさりと躱され、カウンターでもう一方の腕が迫ってきた。
回避は間に合わないので魔刀で受けて防ぐが、威力を止める事は出来ずに後方へと弾き飛ばされてしまった。