A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (778)
第770話 死の予感
鋭いニードルはラミアの皮膚を貫き、中心の空洞から血が流れ落ちる。
隼人、すごいな。しかもそのニードルどこで買ったんだよ。まるで拷問器具みたいだ。
「効いた〜! まだまだいくぞ! 『必中投撃乱舞』」
更に隼人が追撃をかける。
「ぐうぅぅ! もう許さない! 私の血肉としてやる! このゴミクズが〜!」
隼人の攻撃にラミアのターゲットが完全に隼人へと移った。
俺はナイトブリンガーの効果を発動し、気配を薄めてラミアの視界から外れるようにサイドへと移動する。
ティターニアのことも心配だが、今はコイツを倒す事に集中するしかない。
「ひぃいい。向かってきた〜! うぉおおおお〜」
再び隼人が雄叫びを上げ、ラミアから背を向け全速力で逃げ始めた。
「ちょこまかと。逃げても無駄だ! 大人しく食べられろ〜」
「無理〜! いやだ〜! うおおおおおおお〜」
ラミアがティターニアからも離れ、隼人を追っていく。
おそらく、あの叫び声はラミアの注意を引く意味もあるんだろう。
俺もラミアの後方に回り込み追うが、ラミアの方が速い。
隼人との距離も徐々に詰まってくる。
「ここまでか! あとは頼んだぞ!」
隼人が不吉な声を上げ、反転してラミアの方へと向きをかえる。
「ようやく諦めたか。 骨まで食ってやるから安心しろ」
「安心できるわけないだろ! おおおおおおおお。これが俺の必殺! 『必中投撃』」
隼人がスキルの発動と同時にメインウエポンの槍を放った。
隼人の放った槍は一直線にラミアへと向かい、そしてラミアの三叉槍によってあっさり弾かれた。
「あ……」
これは隼人……死んだ。
いや死なせるわけにはいかない。
俺は槍を弾いて動きの止まったラミアの背後へと迫り魔氷剣を突き出しながらスキルを発動した。
『愚者の一撃』
俺のHPと引き換えに魔氷剣はラミアの胴体部分に突き刺さり、刺さった周囲が爆ぜた。
「ギイイイアアアアアアア〜」
ラミアの断末魔の叫びが聞こえてくると同時に魔氷剣を引き、後方へと飛び退く。
全身が鉛のように重くなり、思ったように動けない。
急いでマジック腹巻きから低級ポーションを取り出そうとするが、俺の手はそこで止まってしまった。
「お前か〜! 許さんぞ〜! お前ら全員今すぐ殺す! すり潰してひき肉にしてやる!」
いったいどんな生命力なんだ。
胴体に穴の空いた状態にもかかわらず、憤怒の形相でこちらに振り向き襲ってこようとしている。
まずい。まずい。まずい。
俺の今のHPは一桁しかない。
しかもHPが急激に減ったせいで動きが重い。
今攻撃されたら避けきれない。
つまりは、攻撃を受けてわずかに残ったHPはゼロになり、死ぬ。
やばい、このままなら確実に死んでしまう。
「海斗〜! 逃げろ〜!」
隼人の声が聞こえてくるが、逃げれるものなら逃げてるって。
身体を動かそうとするが、目の前に迫った死に筋肉が萎縮して上手く反応してくれない。
どうにか無理やり脚を後方へと運ぶが、目の前でラミアが三叉槍を構えようとしているのが見える。
ああ……俺本当に死んだ。
春香とキャンパスライフ楽しみたかったな……