A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (780)
第772話 心の声
「理香子ちゃん、逃げるんだ! 今しかない! 俺! 今なら吊り橋効果でいける!」
聞こえてくる隼人の声がおかしい。
「おおおおお〜こえ〜。今が俺の見せ場だ! これで女の子たちからも! 来い! 俺の春!」
どうやら、この差し迫った状況に振り切れて心の声が口を突いて漏れ出してきているようだ。
「ヘビ女こえ〜。俺は人間がいい。人間のおっぱいが〜!!」
隼人の魂の叫びが聞こえてくるが、この場でそれはまずい。完全に俺の後ろの女の子たちにも聞こえているはずだ。
いずれにしても隼人の決死の攻撃で俺への攻撃が一時的に止んでいる。
俺は隙をみて氷剣と魔刀を交互に振るいラミアに斬りつける。強固な鱗を完全に突破することはできないが、お構いなしに攻撃を続ける。
右目を潰された影響で見えないのか、明らかに両サイドからの攻撃が有効になっている。
既に野村さんたちも移動を済ませたのが見えたので一旦距離をとり斬撃を飛ばす。
だが単発の斬撃ではラミアにダメージを与えるための火力が足りない。
残る目を狙う手もあるが、俺の攻撃の精度では難しい。
やはり俺がラミアにダメージを与えるためには『愚者の一撃』しかない。
だが、さっき仕留め損なって危機に陥ったが、近距離からの一撃はリスクが高すぎる。
今度は野村さんの援護も期待できない。
今俺にできること。
俺は攻撃しながらティターニアの方へと向かう。
「ティターニア! しっかりしろ!」
声をかけるが反応がない。完全に意識を失っているようだ。
起こしてポーションを飲ませてやりたいところだが、今は余裕がない。
俺は床に転がっているドラグナーを拾い、ティターニアから離れる。
狙いをラミアに定めてドラグナーの一撃を放つ。
『愚者の一撃』
いつもよりも激しく発光したドラグナーから放たれた蒼い弾丸がラミアの胸部を貫く。
「ぐっふっああああああああ〜」
やったか?
いや、胸と腹に穴が空いてなお動いている。
モンスターだからなのかラミアだからなのか、生命力が強すぎる。
これでヴァンパイアみたいに復活とかされたらもうお手上げだぞ。
いや、まさか。
それはないな。
俺はフラつきながら、即座にマジック腹巻きから二本目の低級ポーションを取り出し飲み干す。
「ここだ! ここしかない! 俺の勇姿を女の子に見せるチャンスだ! 『必中投撃』」
隼人の放った槍が無防備となったラミアの頭部へと飛んでいき残った右目へと刺さった。
「あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁ〜許さん。許さんぞ〜」
ラミアが怨嗟の声をあげるが、隼人がやってくれた。
これでラミアの両目は完全に潰されたので、圧倒的にこちらが有利となった。
それに腹と胸に穴が空いているんだ。ダメージもかなりあるはずだ。
このまま畳み込めばいける。
「海斗! あとはまかせた! 俺はもう何もない。打ち止めだ! 投げるものが無くなった」
バカ! 声を出すな。武器がないなんて言ったらラミアの標的になるぞ。