A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (786)
第777話 吊り橋効果?
結局俺たちが戻ってきたのは五階層だった。
どういう理屈なのかわからないがゲートは一方通行だったようで、あの部屋には行き来できないようでこちら側のゲートは見当たらない。
ベルリアも召喚して念のために『ダークキュア』を使ってもらったので脇腹の痛みはなくなった。
みんなボス戦で消耗していたので、引き上げる前にその場でしばらく休憩を取ることにした。
「海斗先輩本当にありがとうございました。私たちだけじゃ絶対に戻ってこれませんでした」
「無事に戻ってこれてよかったよ。正直俺もみんながいなかったら最後ヤバかったよ」
「理香子ちゃん、俺のことも忘れてない?」
「隼人先輩、もちろん忘れてないですよ。本当にありがとうございました。隼人先輩の勇姿はしっかりとこの目に焼き付けました」
「勇姿……。そ、それほどでもないけど」
たしかに隼人がいなかったら帰ってこれなかったかもしれない。
「はい、海斗さんと隼人さんのおかげです。助けていただいて本当にありがとうございます」
「五階層からあそこじゃな〜。イレギュラーというか反則だよな。まあ助かってよかったよ」
「今回、俺の強い希望で助けに来ることになったんだけど、無理してきた甲斐があったよ。こんなかわいい女の子たちを助けることができて俺は本望だ」
助かって緊張も取れてきたのか隼人の口もいつも以上に軽やかだ。
「それにしても、おふたり共すごかったですね。あのラミアに一歩も引かないなんて」
「勝てたのはほとんど運だよ」
「いや、あんなの見かけ倒しだったな。槍の錆にしてやったよ」
隼人、ラミアに追われて全力で逃げてなかったか? それに精神攻撃でヤバいことになってたと思うけど。
たしかに隼人の槍がラミアの目を貫いたので槍の錆の部分は間違いではない。
その後も女の子たちから目一杯お礼をいわれた。隼人の口も絶好調で、その場で何人かと連絡先まで交換をしていた。
なぜか最後まで俺が連絡先を交換することはなかった。やはり自分から積極的にいかないとダメなのか。
下心があるわけではないけど、なぜ隼人だけ。
やっぱり口か。口が大事なのか。今回の件は俺も頑張ったと思うんだけど。
俺が軽くショックを受けていると野村さんが、
「海斗先輩には葛城先輩がいるじゃないですか。下手に交換しない方がいいと思いますよ」
「あ、ああ。そうだね」
野村さんのひと言で目が覚めた。
たしかに俺は春香一筋だ。
探索者とはいえ女の子と連絡先を交換して誤解とかされたら大変だ。
K-12のメンバーとは仲良くやっているようなので、交換しても大丈夫だとは思うけど余計な誤解を招くような事はしない方がいい。
とはいえ誰も俺の連絡先を聞いてきたわけではないので、杞憂に過ぎない。
休憩を終えた俺たちはシルたちに護られて無事に地上へと戻ることができた。
「海斗! ついに俺の時代がきたぞ! 二人だぞ。女の子二人と連絡先を交換したんだ。俺にも春が! 春がきた〜。俺は絶対このチャンスを逃さない! 見ててくれ!」
「ああ、がんばってな」
世の中には吊り橋効果っていうのがあるらしい。
吊り橋効果っていうのは、日常に戻れば大半はブーストが失われると聞いたことがある。
今回のことがこの吊り橋効果によるものなのかは、俺にはわからないけど隼人が嬉しそうにしているのを見ると水をさすべきではないのはわかる。
がんばれ隼人。