A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (79)
第79話 8階層への準備
俺は今1階層に潜っている。
8階層に潜るために、いつものようにスライム狩りに精を出しているが、予定では月曜、火曜はこのまま1階層でスライム狩りを続けて、水曜日に休みがてら買い出し準備、木曜日に8階層に挑んで土曜日はK-12のパーティで8階層に挑戦する予定だ。
結構スケジュールがタイトなのだが、王華学院の受験に向けて学校で今まで以上に集中して勉強しなければならないので居眠りなど間違っても出来ない。俺の中で探索と並んでこれだけは失敗できないミッションだ。
いつもの通りスライムを狩り続けるがレベルアップしてもやっぱりスライムには殺虫剤ブレスが一番効率が良かったので今日も殺虫剤片手に頑張っている。
スライム職人と化した現在の俺のペースは1時間に13匹を倒せるまでになっており、3時間で39匹を狩ることができたが、せっかくなのでもう一匹倒して40匹に到達してから1日を終了した。
火曜日も同じように40匹を狩った時点で帰ることにしたので、2日で80匹に到達し、満足感と共に帰宅した。
やっぱり1階層はスライム天国。正にブルーオーシャンなので誰にも知られたくない。この階層の素晴らしさを理解してる人間が他にいないとは思えないが誰も真似しないのはなぜだろうか?このダンジョン最大の謎だ。
水曜日の放課後俺は、アウトドアショップに来ていた。
8階層の準備の為にどうしてもほしいものがあったのだ。
それはライフジャケット。8階層は水辺が多く存在しており、完全に水没している箇所もあり、水棲のモンスターが出現する階層なのだ。
そして、俺は殆ど泳ぐことの出来ない、かなづちなので、水に引き込まれたりしたら致命的と言え、どうしてもライフジャケットが欲しかったのだ。
9980円で無事に購入する事が出来たので、ひとまず安心だ。
以前は少しは泳げたのだが、学校の水泳の時間に、同級生がふざけて水の中から足を引っ張ってきた。泳ぎが上手い人間であれば特に慌てる事もなかったのかもしれないが、当時からそれほど泳ぎが得意ではなかった俺は、パニックを起こし、溺れかけたのだ。それ以来、殆ど泳ぐ事が出来なくなってしまっていた。
正直、8階層の水辺エリアはかなり怖い。出来ることなら避けて通りたいが、スルーして9階層に行く手段は無いのでどうしても挑む必要がある
本当は他に欲しいものが1つだけある。それはマジックポーチだ。
先週ミクたちとお昼を食べている時に気がついてしまった。彼女達3人共弁当と水筒を持ってきていたのだが
リュックなどを用意している気配がない。よく考えたら戦闘中も俺だけリュックを背負っていたが彼女たちは背負っていなかった気がする。
「ミク、ちょっといいかな。お弁当っていつもどこに入れてるの?」
「それは、もちろんこれよ。」
そう言って見せてくれたのはセカンドバックをぺったんこにしたようなポーチだった。
「これって、もしかしてマジックポーチ?」
「当たり前じゃない。他の2人も使ってるよ。探索中に荷物って重いじゃない、だから最初にパパが買ってくれたんだ。」
「パパ・・・・」
「私もパパが買ってくれたのです。」
「私も最初に父が買ってくれた。」
「ははは・・・ そうですよね。女の子ですもんね。弁当とか、かさばりますよね。」
「そうそう。便利だから海斗も1個買えばいいのに。」
「まあ。そうですね。検討させていただきます。ははは。」
俺もポーチを買ってくれるパパが欲しかった。1個最低1000万円以上するのに、そう簡単に買えるわけないだろ。お嬢様はちょっと俺とは感覚が違うのかもしれない。
ただ、パーティで俺だけ仲間はずれのような気になるので欲しい。
ポーチの機能を考えても、プラスしかないので本当は欲しい。
でも1000万円以上だよ。一般的な高校生が買えるわけないだろ。
世の中欲しいのと買えるのは違う。
この時に再認識をさせられて、ちょっとだけ憂鬱になってしまった。
明日から遂に8階層に挑むので気持ちを入れ替えて頑張ろうと思う。