A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (791)
第782話 次こそ
「私にまかせろ」
あいりさんが人魂に集まりに向かって走るが、あいりさんに複数の炎が放たれる。
あいりさんが躱しながら距離を詰めようとするが、今度は人魂の一部が細かく分離してあいりさんの周囲を取り囲む。
あいりさんが浮いている人魂を撃ち落とそうと薙刀をふるうが、やはり効果は薄い。
「あいりさん! 聖水です!」
「わかっている」
あいりさんが薙刀を聖水の霧吹きに持ち替え、周囲を取り囲む小型の人魂に向けて聖水を吹きかける。
聖水の霧を浴びた人魂のかけらは、煙をあげて蒸発するようにして消えた。
「いけたぞ」
物理攻撃は効果が薄いが、やはり聖水で倒すことができるようだ。
「マイロード私もいきます」
ベルリアもあいりさんの脇を抜け人魂の集合体へと迫るが、複数の炎がベルリアに向け一気に放たれる。
「遅いですよ。この程度問題にもなりませんね」
ベルリアが炎を避けながら正面に迫る炎を魔刀で斬った。
当然のように左右にわかれた炎がベルリアの肩口を掠める。
「この私にダメージを与えるとは。やりますね」
「ベルリア! 大丈夫かっ!」
「マイロード心配無用です。呪いがあるようですが士爵級悪魔である私にこの程度の呪いが効くはずがありません」
呪いがあるのか。
やはり、シルが言っていたようにただの炎ではなく呪いを内包した炎だったらしい。
それにしてもベルリアは以前も炎を斬ってダメージを受けていた気がする。
武器がかわっても相変わらずだ。
「あいりさんも気をつけてください!」
「ああ、大丈夫だ」
ベルリアが炎を抜け、人魂に向けて聖水を噴霧する。
聖水に触れたところから猛烈な蒸気が吹き上げているが、人魂も後方へと移動しながら炎の攻撃を再び放つ。
「このようなワンパターンの攻撃が通用すると思っているのですか?」
ベルリアは攻撃を躱し今度は炎に向け聖水を吹きかける。
ベルリアの眼前で一気に蒸気が広がり視界が塞がれる。
後方の俺からは見えるが蒸気に包まれたベルリアには見えていない。
ベルリアの頭上から分離した人魂のひとつが迫っている。
「ベルリア!」
「油断しすぎなんだよ。その程度の敵に! もっとしっかりやれよ。吹き飛べ『黒翼の風』」
ルシェがスキルを発動するとベルリアの頭上に迫っていた人魂が消え去り周囲を覆っていた蒸気も一瞬にして吹き飛ばされた。
「ルシェ姫、お手間をとらせてしまい申し訳ありません。視界を塞がれたとはいえこの程度の敵に不覚をとるとは。このベルリア、一瞬にしてこのウィル……」
ベルリアの長口上の間にあいりさんが人魂へ距離を詰めて聖水を噴霧した。
連続で噴霧を繰り返すと、人魂は蒸気とともに完全にその姿を消し、跡には魔核を残した。
「あ……」
「やっぱり聖水だな」
「くっ……次こそ私が」
「ベルリア修行が足りないんじゃないのか?」
「はっ。申し訳ございません。姫の剣としてあるまじき失態。この汚名は必ず次に……」
いちいちベルリアは大袈裟だが、剣は俺に捧げたんじゃなかったっけ。