A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (798)
第789話 黒豚はご主人様の敵
少しだけ回復したおかげで今度は口に含ませてくれたポーションをスムーズに飲み込むことができた。
ポーションを全て飲み干すと『キュアリアル』の効果と合わさって、身体の痛みが消え、呼吸も普通にできるようになってきた
「海斗さん、下がってください。ここは私たちが! 『ファイアボルト』」
ヒカリンは、俺が落ち着いたのを確認して、すぐに戦闘へと加わった。
俺はその場から後退しながらジャグルを確認するが、ジャグルの周辺はルシェの放った流星雨により炎に包まれてはいたが、それでもジャグル自身はまだ健在だった。
さすがにパーティメンバーからの一斉攻撃に無傷ではないが、盾と剣を使いベルリアとあいりさんを寄せ付けずにいる。
俺の下へとシルとルシールが集まってくる。
「ご主人様、お怪我は大丈夫ですか? 先程の攻撃でかなりのダメージを負われたように見えましたが」
「ああ、ティターニアとポーションのおかげで大丈夫だ」
「ご主人様に手をあげるとは、あの黒豚許せません! ですが思った以上に厄介な相手のようです。ご主人様にはルシールが付き従いますので安心してください。ご主人様へのこれ以上の無礼は私が許しません」
「ああ、助かるよ」
シルが怒っている。あのシルがモンスターのことを黒豚呼ばわりするとは相当怒っている。
ルシェも俺の指示なく流星雨を使っているところを見ると相当な感じだ。
ジャグルもかなり厄介な相手には違いないが、二人が本気を出せば十分倒せる。
それにルシールが付いてくれるだけでも、俺にとっては全く違う。
「それでは、あの黒豚に天罰を与えてやります。ご主人様に仇なす大罪人に神の怒りを! 『神の雷撃』」
上空から雷撃が落ちるが、ジャグルは手に持つ大楯を上に突き上げ雷撃を耐えている。
がら空きになった胴体に向け、他のメンバーが攻撃をかける。
ベルリアが肉切り包丁を妨げ、ミク、ヒカリン、そして回復した俺が同時に遠距離攻撃をかける。
三人の攻撃がそれぞれ着弾し、ジャグルへとダメージを与える。
「グウアッ」
時間差でティターニア放ったドラグナーの一撃が黒い鎧を貫通し穴を穿つが、巨体のジャグルを倒すには足りない。
「いくぞルシール」
「はい」
俺はルシールを伴ってジャグルへと駆ける。
さっきの攻撃はかなりヤバかった。ヤバいというか、仲間がいなければ死んでいたかもしれない。
正直、恐怖で身体がすくみそうになるが、折れそうになる俺の心を仲間の存在が支えてくれる。
俺が倒れたら、フォローして助けてくれる。
サーバントたちは怒ってくれる。
俺がダメでも他のみんながなんとかしてくれる。そう思うと自然と身体が動きジャグルへと向かっていた。
再び魔氷剣を発現させて、二刀を構え走る。
「醜い黒豚よ。お還りください『エレメンタルブラスト』」
ルシールがスキル を発動し突風がジャグルを襲い完全に四肢の動きを奪った。
「うぉおおおおおお〜!」
俺は目の前のジャグルの右足に斬りかかる。
雷の魔刀を斬りつけるが、鎧に阻まれる。だが纏った雷は伝わったはずだ。
俺はそのまま右手に持つ魔氷剣を同じ箇所へと振り下ろした。