A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (816)
第807 アウトオブコントロール
「どうしますか? この階層の敵とも戦うことができたしこれで戻りますか?」
「そうだな。まだ後衛が戦闘に参加できていないし、もう少しいいんじゃないか」
「それならもう少し探索しましょうか。じゃあ、次はミクとヒカリンも戦闘に加わろうか。直接攻撃してみて状況でサポートに切り替えて」
「わかったわ」
「硬そうですからね。魔法が効くか試してみるのです」
もし今後も先程同様金属生命体的なモンスターが出るのであれば、その魔法耐性を把握しておいて損はないだろう。
それにしても、見た目だけじゃなく動きもヤバいので気を抜くことができない。
1番ヤバいのは、その加速。
初速からいきなりトップスピードに入るような動きで、近接であれをやられるとこちらの反応が遅れてしまう。
「それにしても、ダンジョンの中までメタリックでまるでSFみたいだな」
「足下が濡れているとスリップしそうだから『アイスサークル』はやめといた方が良さそうなのです」
「ああ、たしかに。ヘルメットがあった方がいいかな」
「あった方がいいとは思うけど、あの黒いのはやめといた方がいいわ」
「いや、あれはあれでけっこう良かっただろ」
「機能は良かったわね。機能はね」
あのファン付きヘルメットの評価が低いのは納得いかない所だけど、このダンジョンの感じはなんとなくワクワクしてしまう。
「これってなんの金属でできてるんだろう」
「鉄だと錆びそうだし、ダンジョン固有の金属の可能性もあるわね」
「貴重な金属だったら持って帰って売れたりしないかな」
「海斗、基本ダンジョンを傷つける行為は禁止だから。今までは隠しダンジョンとか理由があってスルーしてもらってるけど調子に乗ると罰金とられるわよ」
「あ〜そういえば罰金あったな。完全に忘れてた。シルも要注意だからやりすぎるなよ」
「ご主人様、そのような心配は無用です。安心してください」
「そうだな。シルは大丈夫か。ルシェは……」
「なんだよ。わたしは大丈夫だぞ! 今までだってダンジョンを壊すのは、わたしじゃなくてシルだろ」
「まあ、そうだけど」
たしかに今まで問答無用でダンジョンを破壊してきたのはシルだけど、一応ルシェにも釘はさしておいた方が良さそうだ。
ミクに言われるまで忘れていたけど、罰金の件は以前日番谷さんにも、それとなく言われた気がする。
今更だけどダンジョンは国の所有物なので、その中で活動する俺たちも一応ルールに則って活動を続けているが、正直サーバントにルールを当てはめるのは難しい気がしないでもない。
他のサーバントのことはよくわからないが、きっとルシェ以上に聞き分けのないサーバントもいることだろう。
カード所持者に責任があるのは理解できるが、この一年の経験からサーバントとは、決して絶対服従の召使いのような存在ではなく自分ではコントロールできないことも多くあるのがわかった。いつコントロールの埒外となりやらかすかもしれない。できればサーバントのやったことには特例で目を瞑って欲しい。