A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (819)
第810話 似たもの姉妹
「マイロード、申し上げにくいのですが、先程の戦いでほんの少しだけ消耗してしまいました。できるなら魔核をお願いできないでしょうか」
「ああ、もちろんいいぞ。この後も頑張ってもらわないといけないからな
俺はマジック腹巻きからスライムの魔核を取り出す。
「ご主人様、私もお腹がすきました」
「ああ、シルも敵を倒してくれたからな。ほら」
「ありがとうございます」
「わたしも腹減ったぞ。早くくれよ〜」
いつもの事なのでもう何も思わないが、ルシェお前は今回の戦闘には全く参加していなかっただろ。
「それにしてもこの階層のモンスターだけど、やっぱり強いな」
「マイロード、相性の問題です。この程度の相手問題ではありません」
「いや、でもなあ。直接的な魔法も効果が薄い感じだし、硬さもあるしやりにくいと思うぞ」
「そうね。私はあまり役にたてないかも。次は『幻視の舞』を試してみるわ」
「ああ、そうしようか」
やはり、この感じの敵が続くようなら、ミクとヒカリンにはサポートに徹してもらった方がいい気がする。
おそらくスナッチも戦力外だ。
「ふふん。ここはわたしの出番だろう。次からわたしがやってやるよ」
「いけるか? 結構炎への耐性高そうだったぞ」
「バカにしてるのか? わたしの獄炎にかかれば一瞬だ! まあ見てるんだな」
まあ、前衛三人だけでは足りない場合もあるので、少し不安はあるがルシェがやる気なら頑張ってもらうのはアリだな。
俺たちは落ちた魔核を拾い探索を続ける事にする。
「流石に十九階層までくると魔核のサイズもかなり大きくなってきたな」
「大きさだけじゃないわ。色も濃くなってるし純度も高くなってるわね」
「そうだよな。見た感じだと以前遠征で落ちた平面ダンジョンの二十階層のと比べても負けてない気がするんだけど」
「多少ダンジョンによって差があるのかもね」
「たしか平面ダンジョンのが九万円はしたはずだから、これもそのくらいはしてるんじゃないか」
「それじゃあ、この三つだけでも三十万円に迫るわね」
「さすがはシルバーランクのパーティなのです。ちょっと下世話な話ですが、完全にプロクラスに稼げてるのです」
「シル様やルシェ様のおかげで、普通のパーティより格段に効率がいいからな。おふたりには感謝しかない」
「ふふっ、感謝するなら今度魔核をな」
「もちろんです」
今でも多めに渡しているのに、あいりさんからもせしめる気か。
あいりさんもいやいやって感じでもないから俺が口を出す事じゃないけど、ルシェはやっぱりルシェだな。
「ルシェ、あまり欲張ってはいけませんよ」
「なんだよ。シルはいらないんだな。じゃあシルのは無しだぞ」
「それは、また別の話ではないですか?」
「もちろんシル様にもですよ」
「そう、そうですか。それほど言われるなら頂かないのは失礼にあたりますね」
「……シル」
やっぱりシルもシルだった。
まあ、この階層の探索は二人の頑張りにかかっているところもあるし、俺の魔核も有限なのであいりさんにも感謝しておこう。