A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (82)
第82話 汽水域?
俺は今8階層に潜っている。
なんとかワニ型のモンスターを撃退することが出来た上に、魔氷剣 レイピア型とでもいうべきものを発現してしまった。
ちょっと、ゲームのヒロインみたいでカッコいい。
ただ、気配の無い水辺から大型のモンスターがいきなり襲いかかってくる上に、硬くて強い。
正直シルとルシェがいないとやばかった。流石は8階層のモンスターだ。
明後日K-12のメンバーで潜るまでに何かしらの対策を取らないとやばいかもしれない。
「シル、水の中のモンスターを探知する方法って何かないかな?」
「いえ、私の場合スキルとかではなく、もともと気配を感じる事が出来るだけなのでちょっとわからないです。」
「そうだよな。サーバントだと誰でも気配を感じることができるのかな?」
「おい、私は一切感じないぞ。シルが特別なんじゃないか」
そうだった、こいつは今までも何にも探知したことがなかった。罠にもハマりまくったし・・・
あまり実りのない会話をしているとシルが、あっちから多数のモンスターがきます。とちょっと奥の川のようになっている箇所を指差した。
「多数ってどのぐらいだ?」
今までシルが個体数を示さなかった事は初めてだった。
「いっぱいです。こっちに移動してきてます。」
「とにかく敵に備えるぞ。念のため『鉄壁の乙女』を発動しておいてくれ」
そう言っているうちに突然水面が弾けた。
飛び出してきたこれは、巨大な魚?いや羽が生えているのでトビウオか?数十匹の巨大マグロを思わせるトビウオがジャンプしながら突進してくる。
まるで軽トラックの編隊が向かってくるような異様な圧力がある。
第一陣は『鉄壁の乙女』に阻まれて、ドスンと地面に落ちた。
魚らしく落ちたら身動きがあまり取れないのかビチビチ跳ねまくっている。
この巨躯が跳ねまくるだけでかなりの脅威ではある。
第二陣は一陣が阻まれて落下したのを見てなんと空中でUターンをはじめた。
魚型モンスターだが、流石に羽が生えてるだけあって、ある程度空中で自由が効くようだ。
衝撃の光景に圧倒されてしまい呆然として、動きが止まってしまった。
「おい、こいつら倒さなくていいのか?」
ルシェの声にハッとなり指示を出す。
「とりあえずこの地面で跳ねてる奴らを片付けるぞ。シルは『鉄壁の乙女』の効果が切れたらもう一回頼むよ。」
指示をすると同時にルシェが『破滅の獄炎』を発動する。
俺は跳ねているトビウオの1匹に狙いを定めて魔核銃を発砲。
「プシュ」
飛び跳ねる魚は思いの外、ぶれて狙いが外れてしまい、頭ではなく胴体部分にあたってしまった。ただワニ型と違い完全に貫通しているので、問題なく効きそうだ。
そのあと再度狙いを定めて目の前で飛び跳ねているトビウオを順番に始末していく。慣れると作業自体は問題なく終了した。
ちょっと一息ついた瞬間、再び水面が爆発して第二陣が突撃してきた。ある意味ワイルドボアの突進よりも怖い。スピードと数と大きさが違う。
「ドンッ!」
次々に障壁にぶつかる衝撃音とともに目の前の床には飛び跳ねるトビウオが多数散乱している。
慌てて再度、魔核銃を発砲して順番に倒すことに成功した。
全部で20匹近くいるだろう。半分は俺が倒したが残りの半分はルシェが倒してくれた。
「なあ、今度はスキル使いすぎたから、いっぱい魔核ちょうだい。おまけして10個でいいぞ。」
先ほどと同じで明らかに水増ししている。密集していたのでスキル1発で2匹を倒していたはずだ。
スキル五発で魔核10個。明らかに計算が合わない。
「私もお願いします。できれば5個いただけると嬉しいです。」
おいおい、シルまで水増ししてきてるじゃないか。スキル2発で魔核5個って、レベルアップで燃費が悪くなったとしても3個ですむはずだ。
油断も隙もないな。
俺はそれぞれに適切な数を渡しておいた。
ブーブー文句が聞こえてきたが、また今度なと言ってスルーしておいた。
それにしても巨大トビウオの突撃も壮観だった。今までにないパターンと数だった。
それにしても、ワニとトビウオが共生している水場って、ここは汽水域なのだろうか?
まあモンスターだから俺の常識の範疇にはないのかもしれないな。