A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (820)
第811話 メタリックなアレ
俺達は十九階層を進んでいく。
「そろそろ、お昼ご飯にしようか」
「そうね。結構いい時間になってきたわね」
メタリックな周囲に時間的な感覚がいまいち正確に働いていない気がするが、そんな環境でも俺の腹時計だけは正確に時を刻んでいるようで時間を確認すると、既に十二時を回っている。
「シル周囲にモンスターはいない?」
「はい、このあたりに気配はないようです」
「それじゃあ、もう少し見通しの良さそうなところで落ち着こうか」
そう言いながら、昼ごはんを食べる為に場所の確保にダンジョンを進む。
「マスター! 敵です!」
「えっ!?」
期せずして突然後方からティターニアの声が聞こえてきたので、咄嗟にバルザードを構えて身構えるが、俺には敵の存在が確認できない。
「マイロード、あそこにいます」
ベルリアも敵を認識したようだが、ベルリアの指す方向を見てもモンスターがいるようには見えない。
横を歩いていたあいりさんに目線をやるが、あいりさんも確認できていないようで首を横に振る。
「ベルリア、どこだ。俺には確認できない」
「マイロード、あそこの地面です。地面に同化して見えますが目らしきものが確認できます」
ベルリアの言葉に従い、その場から指された場所を凝視する。
「ベルリア、あれはスライムか?」
「おそらくそれに類するモンスターかと」
よく見るとたしかに地面に目らしきものが確認できる。
ただ、地面のメタリックカラーと完全に同化して見える。
うっすらと確認できるその姿は、さながら海中の砂に紛れるカレイやヒラメを想起させるが、おそらく敵はスライム。
以前隼人達と行った平面ダンジョンに現れたアメーバ状のスライム。おそらくはそのメタリック版とでもいうべきモンスターだ。
ほぼ完璧にダンジョンに同化し地面そのものに擬態しているが、今回なぜかシルは何も言ってこなかった。
「シル、このあたりにモンスターはいないんじゃ」
「ご主人様、申し訳ございません。私にはあのモンスターの気配を感じることはできませんでした」
「ああ、気にするな。大丈夫だ。そういう事もある。それにルシェも全く気がついてなかったようだしな」
「なっ、なにを。わたしはもちろん気がついてたぞ。誰かが気が付かないのかとずっと窺っていただけだからな! 本当だぞ!」
シルが感知できないとは特殊な能力を備えているのか?
アメーバ状のメタリックなスライム。今まで他の階層で出現したメタリックなスライムは特別な個体が多かったが、出現した眼前のスライムに限って言えば、この階層のモンスターが総じてメタリックなので、それについては特別なスライムではない気もする。
「あのスライムはわたしがもらうからな。海斗はそこで見てろよ! 『破滅の獄炎』」
ルシェが獄炎を放ち前方の地面が炎に包まれる。
やったか?
ただでさえ確認しづらかったその姿が炎に巻かれ全く見えなくなってしまった。
「マスター、まだです。あそこに」
ティターニアの声に従い、確認するとそこには確かに小さな目らしきものが確認できた。