A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (821)
第812話 速すぎるスライム
あのスライムルシェの獄炎を耐えたのか?
やはりスライムとはいえ、メタリックなボディで炎への耐性があったということか。
「硬いだけのスライムが調子にのるな! さっさと燃え尽きろ。『破滅の獄炎』」
ルシェが二発目の獄炎を放つが、やはりメタルスライムは消失していない。
今度は、最初からメタルスライムの動きを追っていたのでわかったが、メタルスライムはルシェの獄炎を耐えたのではない。
獄炎が発動する前に目で追いきれないようなスピードでその場から瞬時に移動していた。
獄炎の発動スピードは、そこまで速いものではないかもしれないが、普通スキルの発動スピードよりも速く動けるものではない。
とんでもない速さだ。
「ベルリア見たか?」
「はい。姫の攻撃を躱すとはかなりのスピードですね。ただ、あの程度なら私におまかせください」
ベルリアがいつもの「おまかせください」だ。
「あのスピードいけるのか?」
「まったく問題ありません」
「じゃあ、頼んだぞ」
「はい、おまかせください」
「ベルリア! 絶対倒せ! あのスライムわたしの攻撃を2回もかわすとは許せないぞ!」
「はっ、このベルリア命に変えても姫様の期待に応えてみせます」
ベルリアはそう答えると同時に牛魔刀を構えメタルスライムに向けて加速する。
迫るベルリアに対しメタルスライムに動きはない。
すぐにベルリアとメタルスライムの距離が詰まり、ベルリアが牛魔刀を振おうとするが、その瞬間メタルスライムの姿が消えた。
「逃しません」
ベルリアは、更に加速してメタルスライムを追う。
メタルスライムの動きだが、俺は距離のある状態で見ているので辛うじて追えているが、近接ならまず見失うスピードだ。
ただベルリアは近接でもしっかりとメタルスライムの動きを追えているようで、敵に牛魔刀を振り下ろすタイミングを計りながらメタルスライムの動きに合わせて駆けている。
何度か振りかぶった隙に逃げられていたが、ついにベルリアがメタルスライムを捉え、牛魔刀を振り下ろした。
『ガッ』
「クッ、ちょこまかと!」
俺の目にも完全に捉えたように見えたが、牛魔刀はメタルスライムではなく地面へと振り降ろされていた。
「こうなれば仕方がありません。私も本気を出さざるを得ないようですね。いきますよ」
ベルリアが今まで手を抜いていたとは思えないが、振り下ろした牛魔刀を再び構え、前方のメタルスライムへと距離を詰めた。
先程と同じように逃げるメタルスライムを追い詰め、剣を振るうタイミングでベルリアがスキルを発動した。
『ファントムステップ』
ベルリアの身体が急加速し、ブレてメタルスライムと立ち位置を入れ替えそのまま牛魔刀を振るった。
『ギィイイン』
金属同士がぶつかる音が響き、ベルリアの一撃がメタルスライムを捉えた。