A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (822)
813話 光の矢
「なっ……」
ベルリアの牛魔刀は間違いなくメタルスライムのボディを捉えてど真ん中を斬り込んだ。
にもかかわらず、メタルスライムは全くダメージを受けた形跡はなく、すぐにその場から高速移動でベルリアの射程から抜け出してしまった。
「ベルリア!」
「くっ。マイロード申し訳ございません。不覚をとりました。一撃を加えたにもかかわらず倒すことは叶わず。無念です」
ベルリアのセリフ、明らかにやられたキャラのセリフだが、攻めてるのはベルリアだ。
「ベルリア、そんなに硬いのか?」
「はい、牛魔刀の一撃では全くダメージを与える事ができなかったようです」
ベルリアの振るう牛魔刀でダメージを入れる事ができないとなると、俺も無理かもしれない。
一抹の不安を抱きながらもベルリアのフォローに入るべく俺もメタルスライムに向かって走り出す。
俺が距離を詰めようとすると瞬時に移動を繰り返して、全く距離が詰まらない。
「海斗、なにをチンタラやってるんだ。そんな平べったい奴なんかさっさと倒せ!」
背中越しにルシェの厳しい言葉が聞こえてくるが、想像以上に速い。
まともにやったら俺のスピードでは捉える事は難しい。
「ベルリア! 挟むぞ!」
一人で無理ならベルリアと二人でやってやる。
ベルリアも俺の意図を察してメタルスライムを対角線上に追い込んでいく。
メタルスライムがベルリアから逃れ俺の方へと向かって来た。
俺は集中を高めアサシンのスイッチを入れ、逃げるメタルスライムを視界に捉える。
貫通のイメージを乗せて迫るメタルスライムに向けてバルザードを素早く振り下ろす。
スローになって尚追えるギリギリのスピードだ。
『ギイイン』
バルザードの一撃が確かにそのボディを捉えたが、ベルリアの時と同様に金属音が響き渡り、切断する事は叶わなかった。
「うっ、痛っ……」
なんて硬さだ。
バルザードに貫通のイメージを乗せても無傷。
バルザードが欠ける事はなかったが、その衝撃が全て俺の右手首に集中して完全に痛めてしまったようだ。
バルザードを握る手に力が入らない。
俺はバルザードを左手に持ち替え戦闘を続行する。
「マスター、逃げてください」
何から逃げるのかわからないまま、ティターニアの声に反応して左方向へと大きく避ける。
『ジュツ』
俺が避けたその場所を、上空からの一撃が襲った。一筋の光る矢のようなものが上空から一直線に地を目掛けて降ってきた。
上空を見るが、敵らしきモンスターは見当たらない。
という事は今戦っているメタルスライムが放った攻撃なのだろう。
今まで、スライムで直接的な攻撃手段を持つやつはほとんどいなかったので驚きだが、一気に攻略の難易度が上がってしまったのは間違いない。
続け様に上空から光の矢が襲ってくる。